今回は、読書感想ブログとして、延べ10万人以上の高齢者として接してきた医師が書かれた、「平松類著/老いた親はなぜ部屋を片付けないのか」を紹介します。
この本をずばり一言でいうと・・・
「年老いた親の理解できない行動には原因がった」
という点について書かれた本だと言えます。

最近、親が部屋を片付けることをおっくうに感じるのか?部屋がちらかってしかたありません。注意すると急に怒り出すし…、頑固になってきたようにも感じます。

一日、部屋に閉じこもってエアコンをつけないし、怪しい陰謀論を信じて話が通じなくて困っています。
親の行動に対して理解ができなることから「認知症なのでは」と心配になると思います。
この本を読むことで、年老いた親への行動を理解すると同時に、来るべき事態に備えるなど、そんな悩みへの対処法について、考えることができるかもしれません。
《プロモーション:本ページはアフィリエイト広告を利用しています》
※POINT:利用者の住まわれているご自宅を「ゴミ屋敷」と表現することに対して不快感を感じられるかたもいらっしゃると思いますが、この記事では便宜上「ゴミ屋敷」という表現を使用させて頂きます。ご了承ください。
こんな人にこそ読んでほしい
- 自分の親が認知症ではと不安を感じているかた
- なぜ、歳を取ると部屋を片付けることが出来なくなるのか?と疑問に思うかた
- 実際のゴミ屋敷への事例について
この本を読んでわかること
働き盛りの現役世代が老いてきた親とどう向き合い、これから起きるであろうことに対してどう備えればいいのかを解説しています。
本記事で紹介する内容を読めば、親の老後生活に対して不安に思う方でも、老化が及ぼすであろう、体や認知面への変化をとおして介護への理解が深まります。

紹介が遅れました。ブログ管理人のやびっちょです。実際に私も両親の介護を経験しています。又、ケアマネージャーとしてゴミ屋敷となってしまった高齢者の支援を経験してきました。実体験の中で感じた課題や反省も含めてお伝えできると思います。
【関連記事:介護を成功させるための家族の役割3つのポイント】
著者の平松類先生ついて
(ひらまつ・るい) 医師・医学博士、二本松眼科病院副院長。
愛知県田原市生まれ。昭和大学医学部卒業。受診を希望する人は北海道から沖縄まで全国に及ぶ。専門知識がなくてもわかる歯切れのよい解説が好評でメディアの出演が絶えない。延べ10万人以上の高齢者と接し、その症状や悩みに精通している。医療コミュニケーションの研究にも従事。YouTube「眼科医平松類チャンネル」で情報発信を行っている。
『老いた親はなぜ部屋を片付けないのか』(日経BP 日本経済新聞出版)、『悩み・不安・困った!を専門医がスッキリ解決 緑内障』(新星出版社)、『「老害の人」にならないコツ』(アスコム)など著書多数。
【引用サイト:平松 類のプロフィール | JBpress (ジェイビープレス)】
著書を通して、認知症予防に関心のある方にとって非常に役立つ内容となっています。他にも、家庭や介護に関するテーマでいくつかの本を出版しており、読者の共感と反響を呼んでいます。
YouTubeチャンネルを観ますと、「治療さえすれば良い」と言う考えではなく、患者さんの生活の質(QOL)を真剣に考えていることが伝わってきます。
《プロモーション:本ページはアフィリエイト広告を利用しています》

親の態度の変化に対してどこまで心配するべき?
著書の平松先生は、眼科医の専門員に勤務しており、高齢の患者さんも多いことから、高齢者も含めた医療コミュニケーションについても研究しているそうです。
その平松先生は、現役世代(お子さん)の方から「自分の親の様子がおかしい」「認知症ではないか?」という相談を受けることが多いそうです。
「介護」につながるかどうかで判断する
「親の様子がいつもと違う、なにかおかしい」と、感じると認知症を疑うかたも多いとのことですが、実際には「歳をとったことによる体の変化」が原因とされるそうです。

この前、認知症の検査を受けた結果「認知症の前兆」と言われました
仮に認知機能の低下であっても機能が落ちてくるまでは時間がかかります。それほど慌てなくても大丈夫だと、著者の平松先生は言います。

対応を急ぐ場合の見極めとして「脳卒中」や「脳梗塞」、「脳出血」の症状が出た場合には一刻も速い対応が必要です。また、それ以外のケースとしては「介護」に直結するか?どうか?が判断の見極めだと説明します。
※POINT:脳卒中や脳梗塞、脳出血といった病気を発症してしまうと、介護はおろか重篤な状況に陥ると死に至るなど大変危険です。初期症状を発見したら医療機関へ早期の受診。日々の予防に努めることが肝心です。
【関連記事:https://www.noukousoku-prevent.com/information/stroke.html】
介護が必要になる原因ベスト5
親の態度の変化に対して「介護のリスク」がどれくらいあるのかを見極めることが大切だと、平松先生は著書の中で説明しています。
2022年の厚生労働省による「国民生活基礎調査」の結果をもとに、介護が必要になった主な原因を性別ごとに見てみましょう。男性の1位は脳血管疾患(脳卒中)、2位は認知症、3位は高齢による衰弱、4位は骨折・転倒、5位は心疾患(心臓病)となっていますそれに対して女性の場合は、1位が認知症、2位が骨折・転倒、3位が高齢による衰弱、4位が関節疾患、5位が脳卒中です。
※「平松類著/老いた親はなぜ部屋を片付けないのか」18ページより引用
男性、女性ともに「認知症」になったことによる介護のリスクはあるものの、男性は主に「脳血管疾患(脳卒中)」、女性は主に「骨折・転倒」が介護になるリスクが高いと分析しています。

その背景には「生活習慣病」や「下肢筋力の衰え」が要因として挙げられます。衰弱を表現する「フレイル」という言葉も耳にするようになりました
部屋が散らかっているのは目が悪くなったせい?
一方で、「歳をとったことによる体の変化」で、親の問題行動が出現することもあります。
例えば、「部屋を片付けなくなった」親は、単に視力が衰えたり視界が狭くなったりして、汚れやホコリに気づかなくなっている可能性もあります。子どもからすると「こんなに散らかして、物を捨てたり片付ければいいのに」と思っても、当の本人はそれらが目に入らないため気になっていないのかもしれません。
※「平松類著/老いた親はなぜ部屋を片付けないのか」28ページより引用
早めに介護認定を受ける
自分の親が、まだ、自分で生活が出来ているので大丈夫だと思い、「介護認定」を受けることに対して二の足を踏むかたも多いと平松先生は説明します。
「介護なんてまだまだ先」と、思うかもしれませんが、自宅生活に対して不安を感じるなら早めの申請を勧めています。部屋の掃除やゴミ出しの支援、衰弱(フレイル)を予防するためのリハビリテーション。福祉用具などもレンタルすることができます。
【関連記事:理想のケアマネージャーを選ぶ3つのポイント】

この本を読むことで、年老いた親への行動を理解すると同時に、来るべき介護に備えるなど、そんな悩みへの対処法についてなど学びが多い一冊です。詳しくは著書にふれてみて下さい。
ゴミ屋敷の対応について
今まで、いくつかのゴミ屋敷に住んでいた利用者を対応してきました。その事例をもとに、ゴミ屋敷になる利用者の共通点と対処方法を紹介します。
※POINT:各自治体によって、活用できるサービスや制度はさまざまです。あくまで参考程度にお読みいただき、ご自身の住まわれる自治体の行政サービスを確認されて下さい。
ゴミ屋敷のかたずけはヘルパーだけでは対応できない
介護保険サービスを利用するにあたって、自宅のお掃除などを支援してくれる「訪問介護」と言うサービスがあります。訪問介護を利用すると、ケアマネージャーが立てたケアプランに書かれたサービス 内容を元に「週〇回、生活援助」として、ヘルパーが派遣されて援助にあたります。

とてもじゃないけど、山のような荷物を家族だけでは片付けられません。ヘルパーには毎日、親の元に来てもらって、荷物をすべて片づけてください。
ご家族からすると「山のように積みあがった荷物」が「ゴミの山」に見えるかもしれませんが、利用者からすると「大切な荷物」なのです。他人(ヘルパー)が来て、片っ端から片づけられて捨てられてしまったらどう思うでしょうか?

あれも無い!大事にしまっていたあれも無くなっている…。さては、お前が盗ったんじゃ?
荷物が片付いたことで、かえって「認知症」の症状が強く出てしまうこともあります。いわゆる「物盗られ妄想」などです。放り投げて捨ててあるかのように見える荷物も、利用者からすると「大事にしまっている荷物」なのです。利用者を置き去りにして片付けを行うと却ってトラブルになる恐れもあります。

訪問介護の「生活援助」は掃除の支援もサービス内容に含まれますが、あくまで日常生活の範囲内でしか利用できません。状況にもよりますが、「毎日、ヘルパーを利用する」や、「度を超えた個所の片付けや掃除」は介護保険法では利用が認められないケースがほとんどなので注意が必要です。
【参考サイト:【一覧あり】訪問介護でヘルパーができること・できないことは?|ハートページナビ】
ゴミ屋敷を片づけるなら・・・
ゴミ屋敷を片づけるにはいくつかの方法があります。ここでは、その対応方法にふれていきます。
- 家族の協力を仰ぐ
- 専門業者に依頼する
- ボランティアに協力を求める
- 地域包括支援センターに相談する
以上、対応方法を挙げてみました。上記4点、すべてを活用して片づけにあたったこともあります。その際に気を付けることは「利用者ときちんと話し合って理解を求めること」、「認知症などで理解が難しいとしても必ず相談をする」、「必要な荷物だけは本人の意思で選んでもらい家族が引き取る」など、配慮が大事です。
専門の片付け業者に見積もりを依頼する
片づける前に、事前に専門の業者に「見積もりを依頼する」ことは大事なポイントです。できれば、何社かに依頼をかけて、「一番安い業者」に依頼するなど工夫が必要です。
又、見積もりの際に基準となるのが、
- 片づけに必要な人数と時間
- 運び出す荷物の量と種類で運搬するトラックを選定
- ,建物の構造(何階にあるのか?一戸建てか?周りの住環境など)

個人的に対応した感覚で、挙げてみました。ケアマネージャーの業務の範囲にも、ゴミ屋敷の片付けは入っていないのですが、少しでも予算を浮かすため、1人で荷物を片づけた…なんてことも過去にはありました。今は、反省して絶対にやりません。
※POINT:ケアマネージャーの業務でも「ゴミ屋敷の片付け」はできない。ただし、家族やボランティアなどに協力を求めることはできる。
《プロモーション:本ページはアフィリエイト広告を利用しています》
【メルカリ】
高齢者が直面する3つの課題について
ここまで、お読みいただきありがとうございました。それでは、著書「老いた親はなぜ部屋を片付けないのか」を踏まえて、高齢者が直面する3つの課題についてまとめていきます。
その①:人は誰もが歳を取るという事実に目を向ける
高齢者は加齢(歳をとること)に伴う要因で「下肢筋力の低下」や「五感能力の低下」、「認知機能の低下」などさまざまな能力が落ちてきます。
それらの事実を受け入れて、予防や周りに協力を得られればよいのですが「まだまだ、自分は若い」と思っているかたもいらっしゃいます。
「あぁ!自分は年を取った」と、嘆かれる方もいらっしゃるのですが、「子どもの世話にはなりたくない」、「まだまだ、自分で何でもできる」と過信されるかたも多く、かえって見ず知らずの他人を信用して詐欺にあうなどの被害も出ています。
※POINT:人は誰もが歳をとるという事実から目を背けてはいけない。「加齢(歳をとる)という事実と向き合うことで家族や周りとの信頼関係を築くことができる。
その②:家族の大切さに気がつく
「人は誰もが歳をとる」と話しました。衰えが穏やかだと良いのですが、病気や転倒事故で入院になると、一気に介護が必要な状況になります。

私は、介護保険に入っているから大丈夫。いざとなれば、介護サービスをつかって、今の一人の生活を続ければ良いよ
「介護サービス」が使える「介護保険」ですが、そもそも介護サービスは「家族がいるという前提で制度設計された」という事実を知っているかたは少ないと思います。

「介護保険サービス」を利用するにあたっては「キーパーソン(主介護者)」という存在が必要になります。契約やその他手続き、サービスでは担えない対応を「キーパーソン(主介護者)」に依頼することで介護が始まります。
※POINT:キーパーソン(主介護者)がいないと「困難事例」と言われるケースになることも
その③:人は独りでは死ねない
利用者と話していると「ピンピン・コロリで逝くから、自分は誰の迷惑にもならないよ」と、話されます。

死んだら、骨はそこら辺にでも捲いてくれ。あとは野となれ山となれだ
人はお亡くなりになると火葬をしなければいけないと法律で定められています。又、火葬後の遺骨に関しては、勝手に骨を捨てたりしてはいけません。決められた場所でしか認められません。

お亡くなりになったあと、葬儀屋に手配して遺体の安置、火葬から納骨まで人の手が必要になります。家族に頼れないなら、専門の業者に早いうちに相談しましょう。
【関連記事:「老後ひとり難民」を読んでわかる独居高齢者が直面する3つの課題】
PR
さいごに
最後までお読みいただきありがとうございました。戦後日本社会は「年老いた親」と「働き世代の夫婦」に「こどもたち」という家族モデル(サザエさん一家が例に挙げられます)を中心に社会制度を設計してきたと言われています。
ニュースで取り上げられる社会保障問題の「年金制度」や「医療・介護」も「家族がいるという前提」で制度設計されています。今、多様化の社会で「お一人様」が話題ですが、私たちの暮らす社会システムは、「人生設計の多様化」には追い付いていません。
「老いた親はなぜ部屋を片付けないのか」を通してさまざまな加齢(歳をとること)に伴う問題にふれてきました。又、別の形でこの問題にふれられればと思います。またの機会にお願いします。
《プロモーション:本ページはアフィリエイト広告を利用しています》

