
近年、世界が混迷を深める中、答えのない問いに対峙する意味でも教養を学ぶ重要性は高まっています。その中で、佐藤優さんの書籍は教養を学ぶ上で最適なテキストだと言えます。
本記事では、佐藤優さんの書かれた書籍の中で、自身で記した伝記である『思想的自叙伝』を年代別に紹介する『まとめ記事』となっています。
学生時代の頃の思い出を書いた『十五の夏(上下巻)』や、政官界を震撼させた「鈴木宗男事件」を取り上げた『国家の罠』など、数奇な運命をたどる佐藤優さんの歴史を代理経験できる構成記事となっています。
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Kindle Unlimitedこの記事を読んで欲しい人もしくは読んでわかること
この記事では、佐藤優さんが過去に書かれた著書の中から、自叙伝(自分で書いた自伝)を中心に紹介する内容となっています。
佐藤優さんの持つ知識や教養力が、いかにして身についたのか?優さんの経歴を自伝を追うことで代理経験できる内容となっています。

佐藤優さんは、自身の著書の中でも「小説を読むことは、ストーリーを通して主人公の体験を代理経験できる」と、本の中でも小説や物語を読む意味を説いています。

今回、優さんの半生を振り返る意味でも、本を一通り読み返しました。その中で、ご自身の持つ記憶力や文章として表現する力をまざまざと魅せられた思いです。
- 佐藤優さんの年代ごとに書かれた「自叙伝」を紹介する記事となっています
- 著書を紹介しながら、佐藤優さんの思想や教養への理解が深まる内容となっています
- 外交官から作家へと至るまでのキャリアを追いかける構成記事となっています
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佐藤優さんの出生から高校受験まで

佐藤優さんは、1960(昭和35)年、東京都渋谷区生まれエンジニアの父と沖縄生まれの母との間に生を受けます。
埼玉県大宮市(現さいたま市)の公団住宅(いわゆる団地)育ち、時は戦後復興に沸く高度成長期の日本が舞台となります。

Wikipedia(ウィキペディア)や、他の著書でも紹介されることの少ない、佐藤優さんの幼少期が書かれた自伝が『先生と私(上下巻)』になります。

『先生と私(上下巻)』では、日本が元気な時代で、右肩上がりで成長していった雰囲気が本からも読み取れるよね。
『先生と私(上下巻)』~師との出会いについて~
『先生と私(上下巻)』では、優さんの誕生から高校時代までに出会う、両親を始めとした先生や塾の講師、伯父や牧師など優少年に多大な影響を与えた先生たちとの交流を書いたノンフィクション作品となっています。
優少年が一番の影響を受けたと語る父と母の存在。小学校高学年になると、進学塾で出会う先生の影響を受けて読書体験が始まります。
初めて小説を読んだ、モーパッサンの「首飾り」や、今後の将来を予見する『資本論』など、『先生と私(上下巻)』を読むことで優少年の思想形成の芽が理解できます。

パパ!本の中で、数学の先生が言った「自分の頭で考えること」って言葉は、胸に刺さったよ。
先生たちの指導に触発されながら、「浦和高校」への受験を目指します。結果は合格。優少年は進学の後、人生の友ともいえる人物と出会います。その人物とは「豊島昭彦」君(文章ママ)です。
※おすすめ書籍:『先生と私(上下巻)』
- 出版社 : 幻冬舎 (2016/4/12)
- 発売日 : 2016/4/12
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 413ページ
- ISBN-10 : 434442462X
- ISBN-13 : 978-4344424623
- 寸法 : 15.2 x 10.2 x 1.7 cm
モーパッサンの「首かざり」を教えてくれた国語の先生。『資本論』の旧訳をくれた副塾長。自分の頭で考えるよう導いてくれた数学の師。――異能の元外交官にして、作家・神学者である〝知の巨人〟はどのような両親のもとに生まれ、どんな少年時代を送り、それがその後の人生にどう影響したのか。思想と行動の原点を描く自伝ノンフィクション。
引用:Amazon.co.jp: 先生と私 (幻冬舎文庫) : 佐藤 優: 本
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【関連記事:自伝作品『先生と私』を通して佐藤優を読む【誕生~高校入学まで】】
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『十五の夏』~優少年「社会主義国家」を見る~
1975年夏、高校合格のご褒美で、ソ連・東欧へ旅行をするというチャンスに恵まれます。時は、冷戦時代の真っただ中という時代背景がありました。
「社会主義国」と言われても、現代の日本では思想の断裂を理解できないと思います。ソ連とアメリカが「明日にでも、核戦争を始めるのではないか?」という、緊張感の中の出来事でした。

旅費は、3年間の高校の授業料のなんと10倍!その金額を惜しみなく出してくれた両親の愛情にびっくりです。
カイロ経路から、チェコスロバキアで東欧入りしてポーランドへと至ります。そして、目的地でもある、日本で文通(手紙でやり取りすること)をしていた、「フィフィ一家」が住むハンガリーへたどり着きます。
旅路のトラブルを乗り越えながらも優少年は、社会主義国家「ソ連」への入国を果たします。移動のトラブルの中で「正直に言いますが、もう二度と来たいと思いません」と、弱音を漏らす風景もありました。
窓から「ボリショイ劇場」と「クレムリンの赤い星」がうっすら見える…。そんな風景と共に15歳の夏は過ぎていきます。
優少年は、モスクワを歩き、同じソ連度でも別世界の中央アジアへと渡ります。帰路のバイカル号では、不思議な「授業」が著者を待っていました。

この40日間の旅は、著者である佐藤優さんの人生を方向付け、人生観を変えるほどの大きな影響を与えたとされる作品です。こんな経験ができるなんて羨ましいな…

『十五の夏』を読んで感じたことは、1975年頃の社会主義国の様子が興味深く描かれていたところだと思います。歴史書や社会学と言った俯瞰からの視点では無く、旅行記を通した一人の少年の視点から見た社会主義国家が書かれているとことが面白いと思います。
※おすすめ書籍:『十五の夏 上 (幻冬舎文庫)』
- 出版社 : 幻冬舎 (2020/8/6)
- 発売日 : 2020/8/6
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 536ページ
- ISBN-10 : 4344430069
- ISBN-13 : 978-4344430068
1975年夏。高校合格のご褒美で僕はソ連・東欧を旅した。費用は48万円、3年間の授業料の10倍もかかる。両親には申し訳ないが好奇心を優先した――。カイロ経由でチェコスロバキアからポーランド、ペンフレンドのフィフィ一家が住むハンガリー、ルーマニアを経て、ソ連入国まで。様々な出会いと友情、爽やかな恋の前編。
引用:十五の夏 上 (幻冬舎文庫) | 佐藤 優 |本 | 通販 | Amazon
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※おすすめ書籍:『十五の夏 下 (幻冬舎文庫)』
- 出版社 : 幻冬舎 (2020/8/6)
- 発売日 : 2020/8/6
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 552ページ
- ISBN-10 : 4344430077
- ISBN-13 : 978-4344430075
ソ連国営国際旅行公社の職員と別れ、ホテルに戻った。窓からボリショイ劇場とクレムリンの赤い星がうっすら見える。寝付けずに数学の問題集を解いていたら、朝8時になっていた――。モスクワを歩き、同じソ連でも別世界の中央アジアへ。帰路のバイカル号では不思議な「授業」が待っていた……。少年を「佐藤優」たらしめた全40日間の旅の記録。
引用:十五の夏 下 (幻冬舎文庫) | 佐藤 優 |本 | 通販 | Amazon
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高校~大学生時代について

高校生時代の自伝作品と言えば『私のマルクス』と『同社大学神学部』が挙げられます。1975年4月に優さんは、埼玉県立浦和高等学校に入学します。
友人に頼まれ、生徒会本部で会計を担当しながら文芸部、さらに応援部にも加わるなど多忙な学生生活を送ります。
そして、高校一年の夏休み、1975年7月に優さんは再び、ソ連・東欧へと旅立ちます。ご両親も「共産圏」という異世界を見せることで、優さんがどう変容するのか?形容しがたい好奇心を持ち合わせていたことに感謝しています。

この旅行がなければ、優さんはマルクス主義に関心を持つことも無く、神学部に進路を取り、プロテスタント進学を専攻することも無かったと言います。さらに、外交官になることも、そして外交官になってモスクワに赴任してからも、ロシア人に偏見を持たずに人脈を拡大することにもならなかったと思うと語っています。

パパ!この旅行が優さんの人生の方向を決めたきっかけでもあったのね。
浦和高校では、徹底した詰め込み教育だったこともあり、知的刺激に希薄さを感じた優さんは授業に身が入らなくなります。ひとつ、倫理社会を教えていた、堀江六郎先生の授業を除いては。
堀江先生は、教科書を使わないことが特徴でした。部落問題や人間疎外、相対性理論パラダイムの問題や実存主義。そして、神の問題というテーマを立てて講義を行っていました。

優さんは、マルクス主義や無神論へと傾倒していきますが、堀江先生をはじめ、様々な先生等に見守られながら高校生活を送ります。そして、悩みながら進路を「同志社大学神学部」へと目標を定めます。
※おすすめ書籍:『私のマルクス』
- 出版社 : 文藝春秋 (2010/11/10)
- 発売日 : 2010/11/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 414ページ
- ISBN-10 : 4167802015
- ISBN-13 : 978-4167802011
「私は人生で三度マルクスに出会っている」。浦和高校、同志社大学で過ごした濃密な青春の日々が甦る、著者初の思想的自叙伝
引用:私のマルクス (文春文庫 さ 52-1) | 佐藤 優 |本 | 通販 | Amazon
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Kindle Unlimited同志社大学神学部へ
1979年4月に同志社大学神学部に、優さんは入学します。当時、「神学」を学ぶ動機として、深い考えがあったわけではないと語っています。
進学校だった浦和高校の雰囲気(外務省に似ている)が体質に合わなかったこと、受験勉強が嫌いだったこと。当時、付き合っていたガールフレンドにふられたことで、彼女に会いたくないと首都圏を離れ、京都の同志社大学神学部へと至ります。

神学部と大学院で学んだ6年間が、その後、優さんが人生で経験する原型があったと話されているね。どんな大学生活を送ったのだろう?

優さんは、神学について「虚学であるが故に、危機的な状況で人間の役に立つ不思議な知」であると説明しています。
著書の中で、神学生は神学専門科目の授業を神学館で受けます。牧師になると讃美歌を学び、パイプオルガンの実習もあると話します。牧師になると、説教を始め人の前で話をすることから逃れられず、レトリックによって説得力を増す技法なども説教学演習で行うそうです。
学生時代、友人たちと飲みに出かけることも多く食べ物に関する描写も多いのが優さんの自伝の特徴でもあります。行きつけの酒場では、ほろ酔い加減になりつまみを頼むのですが、その描写を引用します。
つまみもいずれも適正価格だ。確か、乾き物は1品300円、ソーセージ缶とアスパラ缶が500円、鮭感が700円、キャビアだけは少し高く1200円だったと記憶している。
木村マスターは、「こういった缶詰でも、ちょっと工夫をするだけで、美味しくなりますよ」と言って、簡単な調理をしてくれる。ソーセージ缶を小鍋にあけて、汁こと加熱する。それと同時に粉の洋辛子をとく。小さなコップで勢いよく辛子をといて、コップをひっくり返す。「3分くらいたつといい辛さになります」とマスターは言う。皿を熱湯で温めて、その上に4センチくらいのウィンナー・ソーセージを並べる。辛子をつけて食べると、ウィンナーの皮がプチッとはねて、そこから肉汁が出てくる。缶詰のソーセージがこれほどおいしいとは思わなかった。これをつまみにして、大山君と私は水割りをに2~3杯くらい追加して飲む。
引用:佐藤優著、『同志社大学神学部』37ページより
当時、学園闘争による暴力も氾濫していましたが、優さんは友人たちと読書や語らいで大学生活を謳歌していました。大学生活の中で、生涯をかけて学ぶことになるチェコの神学者「フロマートカ」に魅かれていきます。

優さんは、働きながらチェコ語を研修することも出来て、チェコスロヴァキアに着任ができる「外務省」の試験を目指します。

すごい!自分の知的好奇心を満たす為に「外交官」を目指すってカッコイイ。
一度は外務省の試験に不合格になるも、一念発起して二度目の試験で無事に外務省への合格通知が優さんのもとに届きます。「外交官 佐藤優」が誕生する前夜の出来事でした。
※おすすめ書籍:『同社大学神学部』
- 出版社 : 光文社 (2012/11/17)
- 発売日 : 2012/11/17
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 348ページ
- ISBN-10 : 4334977243
- ISBN-13 : 978-4334977245
私にとって同志社大学神学部は、小宇宙だった。神学部と大学院の6年間で経験したことの中に、その後の人生でわたしが経験することになる出来事の原型が、文字通りすべて埋め込まれていた。書物だけから神学を学ぶことはできない。また、教会に通い信者として生活すると神学の勉強は、まったく位相を異にする。同時に純粋な学問としての神学も存在しない。虚学であるが故に、危機的な状況で人間の役に立つ神学という不思議な知を、わたしは、同志社大学神学部で、全人格を賭して教育に従事するすぐれた神学教師たちと、他者を自己よりも大切にする友人たちから学んだ。現下の日本は危機的状況にある。この危機から脱するために、虚学である神学が役に立つと思いを込めて本書を上梓する。 (まえがきより)
引用:同志社大学神学部 | 佐藤 優 |本 | 通販 | Amazon
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外務省入省そしてイギリス着任へ

外務省入省1年目から、モスクワでの勤務を希望し大学で哲学を学ぼうと思っていた優さんの意図とは裏腹にイギリスへの着任が決まってしまい当てが外れてしまいます。
「外交官として、語学力が基本になる。外務省の仕事は英語の比重がきわめて高い。イギリスに素直に行け」と先輩に勧められてイギリス行きを決める優さんでした。
語学研修に追われる毎日でしたが、ホームステイ先の聡明な少年グレンとの出会いが、優さんの視野を広げてくれる案内人の役割を果たします。1986年夏の出来事でした。

特にグレンと、イギリス料理について会話をする場面が印象的だよね。イギリス料理は口に合わないと、優さんがグレンにカミングアウトする場面も微笑ましかったな。ロンドン書店を巡る風景は目に浮かぶようだよ。

イギリスの階級社会とその孤独について、外の日本からはうかがい知ることができない情景も、グレン少年と優さんの対話を通して垣間見ることが出来ます。立場も国も越えた友情がそこにはありました。
※おすすめ書籍:『紳士協定: 私のイギリス物語』
- 出版社 : 新潮社; 文庫版 (2014/10/28)
- 発売日 : 2014/10/28
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 405ページ
- ISBN-10 : 4101331774
- ISBN-13 : 978-4101331775
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
1986年、入省二年目の私はイギリスにいた。語学研修に追われる単調な日々の小さな楽しみは、ステイ先で出会った12歳のグレンとの語らいだった。ロンドン書店巡り、フィッシュ&チップス初体験。小さな冒険を重ね、恋の痛みや将来への不安を語りあった私たちは、ある協定を結んだ……。
聡明な少年を苛む英国階級社会の孤独と、若き外交官の職業倫理獲得までの過程を描く告解の記。
引用:紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫) | 佐藤 優 |本 | 通販 | Amazon
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古書店主「マスト二ーク氏」との出会い
優さんは、イギリスの地でフロマートカ関連の神学書を入手できないかと、書店を尋ねます。ソ連・東欧書の専門店で「チェコで出版された神学書は扱っていない」と言われ、肩を落とします。

そんな時に、ロンドンに東欧社会主義国の禁書や宗教書、古本を手に入れるのが上手い古書店があると教えられます。

住所を聞くと、ポーランド系の亡命者が多く住んでいる地区で、特にポーランドから逃れてきたユダヤ系の人たちが多く住んでいる地域だと聞かされます。
イギリスに亡命してきたロシヤ人や東欧人には色々な人がいるので、深く付き合う前に人物を観察することを人に勧められる優さんですが、持ち前の好奇心を活かして古書店主「マスト二ーク氏」と会う約束を取り付けるのでした。

神学書を通して、優さんはマスト二ーク氏との交流を深めていきます。いつしか、彼を師として、様々な対話を通じて学びを得ていきます。宗教、国家、民族と後の、佐藤優のライフワークへと繋がっていきます。

ホームステイ先のグレン少年との出会いを通して、高等教育を受けていない両親のもとに生まれた子どもの階級上昇の難しさを『紳士協定』では書きました。『亡命者の古書店』では、亡命者が英国人に同化しようと努力しても、同化できない亡命チェコ人の内面的世界が書かれています。
1987年8月に、優さんは英国勤務を終えてソ連へ転勤となります。ロンドンのブライスロードにあった「インタープレイス」の店長室で、マスト二ーク氏からの講義は1986年秋から87年夏までの期間となりました。
短い期間であっても、優さんの思想的世界観と骨組みを形成するに寄与された祝福された時間を『亡命者の古書店』を読むことで代理経験することができます。
※おすすめ書籍:『亡命者の古書店: 続・私のイギリス物語』
- 出版社 : 新潮社; 文庫版 (2018/1/27)
- 発売日 : 2018/1/27
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 445ページ
- ISBN-10 : 4101331790
- ISBN-13 : 978-4101331799
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
大学在学中、チェコの神学者・フロマートカの人生に惹かれた著者は、神学研究の志を秘め外務省に入省、ロンドン郊外でロシア語研修に入る。そして任官2年目、同じく亡命チェコ人で、社会主義国の禁書を扱う古書店主マストニークと出会い、彼を師として、宗教や民族、国家を巡る対話を重ねながら、世界の読み解き方を知る。
自身の知的原点を明かす自伝エッセイ。『プラハの憂鬱』改題。
引用:Amazon.co.jp: 亡命者の古書店: 続・私のイギリス物語 (新潮文庫) : 優, 佐藤: 本
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ソ連へ着任~国家の消滅~

1987年9月から、88年5月まで、優さんはモスクワ国立大学言語学部に留学します。ソ連の崩壊を目のあたりにしながら、92年9月から95年2月まで、哲学部宗教史宗教哲学部で教鞭を取ります。

当時のソ連は、社会主義国家でした。科学的無神論を国是としており、マルクスが「宗教は人民の阿片(アヘン)である」と、言った以上は大学で宗教のような学問を研究するわけにはいきません。あくまで批判的に研究するという立場で設立されたのが哲学部宗教史宗教哲学部です。

そこで、サーシャとの運命的な出会いを果たすのよね!大学の講義の中で教授に向かって反体制の演説をする、サーシャに魅かれた優さんは声を掛けます。
サーシャと意気投合した優さんは、お酒(ウォトカ)を交わしながら仲を深めていきます。あるとき、サーシャの口から「ソ連を破壊する」と告げられます。
ロシア語のキャリア職員は研修終了後に、問題を起こさなければモスクワで二年間勤務することが通例だそうです。専門職であれば、極東のナホトカの総領事館での勤務もあり得るとのこと。
モスクワとの激務とは違い、定時で上がれることの多いナホトカを希望した優さんは、ロンドンやプラハで集めた文献を読み込んで、神学研究をまとめて博士論文を書きたいと将来をイメージしますが、期待は裏切られます。「モスクワ勤務」を言い渡されてしまいます。

政治の舞台も大きく動きます。ゴルバチョフの「改革」は急激に国家の柱を軋ませます。優さんは、若き外交官として「国家の自壊」を目の前で目撃します。

優さんも、体調を崩してしまい1991年の秋に日本に一時帰国してしまいます。二か月の静養を経て92年1月にモスクワに戻りますが、ソ連はすでに崩壊しており、「新生ロシア連邦」で勤務を再開することになります。
ソ連の崩壊と共に、盟友サーシャとの決別もありました。時代は大きく動いていく予感が本書を通して感じられます。
※おすすめ書籍:『自壊する帝国』
- 出版社 : 新潮社; 文庫版 (2008/10/28)
- 発売日 : 2008/10/28
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 603ページ
- ISBN-10 : 4101331723
- ISBN-13 : 978-4101331720
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
ソ連邦末期、世界最大の版図を誇った巨大帝国は、空虚な迷宮と化していた。そしてゴルバチョフの「改革」は急速に国家を「自壊」へと導いていた。ソ連邦消滅という歴史のおおきな渦に身を投じた若き外交官は、そこで何を目撃したのか。大宅賞、新潮ドキュメント賞受賞の衝撃作に、一転大復活を遂げつつある新ロシアの真意と野望を炙り出す大部の新論考を加えた決定版!
解説・恩田陸
引用:自壊する帝国 (新潮文庫) | 優, 佐藤 |本 | 通販 | Amazon
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※おすすめ書籍:『国家の崩壊 』
- 出版社 : KADOKAWA (2011/12/22)
- 発売日 : 2011/12/22
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 400ページ
- ISBN-10 : 4043882017
- ISBN-13 : 978-4043882014
- 寸法 : 10.6 x 1.6 x 14.9 cm
ソ連崩壊から20年。国家はいかにして崩れるのか、問い直す!
1991年12月26日、ソ連崩壊。国は壊れる時、どんな音がするのか? 人はどのような姿をさらけだすのか? 日本はソ連の道を辿ることはないのか? 外交官として渦中にいた佐藤優に宮崎学が切り込む。
引用:国家の崩壊 (角川文庫) | 佐藤 優, 宮崎 学 |本 | 通販 | Amazon
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北方領土問題に取り組む
1997年11月、当時の橋本龍太郎総理とエリツィン大統領が非公式会談で交わした「クラスノヤルスク合意」に基づいて、優さんも北方領土問題に向けて動きます。

一方で、鈴木宗男パッシングが世論を騒がせるようになると、優さんの環境にも変化が見られるようになります。2002年2月、優さんは6年11カ月勤務した「分析第一課」から「外交史料館」へ異動になります。この人事は、鈴木宗男氏に近いとされた外交官の粛清を意味するものでした。

この頃になると、外務省の上司や仲の良かった同僚も、優さんを避ける様になります。一方で、ロシアの盟友サーシャからのメールが届くなど、優さんのことを案ずる人たちも数多くいました。
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運命の朝『国家の罠』

2002年5月14日、外交史料館長が血相を変えて、優さんの元へ飛び込んできました。「検事が来る」と、外交史料館長は言います。

優さんは、この時を振り返り分析しています。「東京地方検察庁特捜部は、国際機関である「支援委員会」からみの背任容疑で、優さんを逮捕し、そこから鈴木宗男氏に繋げる事件を”作る”絵図を書いていたのでは」と書かれています。実際にこの後、優さんは逮捕されてしまいます。
佐藤優さんは、鈴木宗男氏のことを「学校の頭とは別に、本質的な頭の良さ、優さんの造語で『地アタマ』がある」政治家であるということをソ連崩壊前後の対応を見て評価していました。
逮捕当日の朝早く、優さんは鈴木宗男氏から電話連絡を受けます。「検察も本気だ」と、逮捕に向けて検察が動いていることを警告します。優さんは「何があっても取り乱してはならない」と自分に言い聞かせて自宅を後にします。

特捜の対応にもよりますが、この時の優さんの読みでは、早ければ23日、遅くとも三か月くらいで出てくるだろうと予測を立てます。実際は、この読みは大きく外れます。結局、512日間の独房暮らしを送ることとなりました。

狭い部屋に512日も閉じ込められる生活だなんて…想像もつかないよ。
※おすすめ書籍:『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』
- 出版社 : 新潮社 (2007/10/30)
- 発売日 : 2007/10/30
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 550ページ
- ISBN-10 : 4101331715
- ISBN-13 : 978-4101331713
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
ロシア外交、北方領土をめぐるスキャンダルとして政官界を震撼させた「鈴木宗男事件」。その“断罪”の背後では、国家の大規模な路線転換が絶対矛盾を抱えながら進んでいた――。
外務省きっての情報のプロとして対ロ交渉の最前線を支えていた著者が、逮捕後の検察との息詰まる応酬を再現して「国策捜査」の真相を明かす。執筆活動を続けることの新たな決意を記す文庫版あとがきを加え刊行!
引用:国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫) | 優, 佐藤 |本 | 通販 | Amazon
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東京拘置所での生活について
鈴木宗男事件の詳細については、『国家の罠~外務省のラスプーチンと呼ばれて~』に譲ります。ここでは、拘置所の生活について本書からふれたいと思います。
拘置所では精神に変調をきたす人もいる。私の独房の向かい、三十五号の囚人が、徐々に精神に変調をきたしはじめ、夜中も眠れずに奇声を発したり、職員を呼びつけて種々の訴えするようになった。睡眠薬を相当量投与されていたが、寝付けないようで、ある日の夜中、大きな音を立て、激しい調子で訴えを始めた。ほかの囚人にも同様が広がり、獄舎に緊張が走った。
引用:『国家の罠~外務省のラスプーチンと呼ばれて~』~471ページより~

変調をきたした囚人を一喝したのが、優さんの隣に収監されていた「三十一房の隣人」でした。この隣人の名前を偶然、優さんは知ってしまうのですが、30年以上前に共産主義革命を目指して大きな事件を起こした人物だったと言います。

保釈された後に優さんが一番に買い求めた本が、この隣人の獄中手記だったそうです。
あの閉ざされた空間で、真摯に自分と、そして歴史と向き合う姿勢を「三十一房の隣人」から学んだと優さんは言います。
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佐藤優、塀の中で『獄中記』を書く

優さんは、2002年5月14日(火)に逮捕されます。逮捕から最初の三日間は一切の差し入れを禁じられます。弁護人が5月17日(金)に差し入れたノートが、20日(月)に届きます。
拘置所では、規則でノートの差し入れは認められるが、ボールペンの差し入れは認められません。囚人が購入するシステムとなっているが、被疑者が手元にボールペンが届くまで記録を取れないという、著しく不利な状況下で検察との攻防戦を余儀なくされます。

獄中、優さんは哲学書や聖書を始めとした神学書などを差し入れてもらい、圧倒的な量の読書を始めます。私も『獄中記』を読んだことで読書量と読む本の質が変わったと思います。

次に挙げる書籍のリストは、獄中で優さんが読んだリストの一部です。パパが、『獄中記』を読んで影響を受けて、実際に読んだ本を中心に紹介します。
※獄中で読んだ書籍リスト(その中でやびちょさんが実際に読んだ本を抜粋)
- 浅田彰『構造と力』勁草書房、1984年
- 網野善彦『異形の王権』平凡社ライブラリー、1993年
- ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体~ナショナリズムの起源と流行~』リブロポート、1987年
- 柄谷行人『<戦前>の思考』講談社学術文庫、2001年
- 神谷行人『マルクスその可能性の中心』講談社学術文庫、1990年
- アーネストゲルナー『民族とナショナリズム』岩波書店、2000年
- 司馬遷『史記列伝』1・2・3・岩波文庫、1975年
- 『聖書 新共同訳 旧約聖書続編つき 引照つき』日本聖書協会、1993年
- 『太平記』(全4冊)小学館、1998年
- ユルゲン・ハーバーマス『公共性の構造転換』未来社、1994年
- カール・バルト『キリスト教倫理』(Ⅰ~Ⅳ)親教新書、1961年
- ミシェル・フーコー『監獄の誕生 監視と処罰』新潮社、1977年
- ヘーゲル『精神現象学』(上下)平凡社ライブラリー、1997年
本書『獄中記』で言及はしたけれど、差し入れなかった本のリストなども含めると膨大な冊数になります。検察との攻防の記録だけでなく読書の記録も含めた内容が、この本の魅力と言えます。

獄中で書いたノートは、B5判で62冊にのぼったそうです。
※おすすめ書籍:『獄中記』
- 出版社 : 岩波書店 (2009/4/16)
- 発売日 : 2009/4/16
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 550ページ
- ISBN-10 : 400603184X
- ISBN-13 : 978-4006031848
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まとめとして~514日後の出獄まで~

2002年5月20日(勾留七日目)の記録から、2003年10月9日(出獄後1日目)までの記録が『獄中記』には書かれています。出獄後も、裁判は続きますが、有罪判決の確定と失職を経て外務省職員として失職する形となります。
一方で、一審判決で執行猶予がついたことを機に、捜査の内幕や背景などをつづった著書『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』を2005年に出版すると大きな反響を呼びました。
現在も、執筆活動を続ける佐藤優さんですが、2020年代初頭、慢性腎臓病に伴う人工透析と、がん治療のための前立腺の全摘出手術を受けるなど「病気のデパート」のような状態であると自ら公表されています。

優さんは、「人生の残り時間を意識」して「作家としての仕事に優先順位をつけ」て執筆活動を行なっています。『友情について僕と豊島昭彦君の44年』では、高校時代の親友豊島昭彦君がすい臓がんになったことを本にするというプロジェクトにも挑みました。

『先生と私(上下)』で浦和高校に進学した時に出会った、豊島昭彦君⁉
※おすすめ書籍:『友情について僕と豊島昭彦君の44年』
- ASIN : B07QPNY668
- 出版社 : 講談社 (2019/4/23)
- 発売日 : 2019/4/23
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 6.7 MB
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 263ページ
高校時代の親友が膵臓癌に。余命の中央値は291日――。「豊島、一緒に本を作ろう。君の体験という財産を、後の人たちのために遺すんだ」「でも僕はたいした人生を送っていない。大学を卒業して一般企業に入社し、結婚して子どもが2人できて、2度の転職をしたけれどごく普通のサラリーマン生活を送ってきたに過ぎない。人様に誇れるようなことは何一つしてきていないし、そんな私の人生を本にしたって誰も興味を持って読んでくれる人などいないだろう」「そんなことはない。豊島君が生きた時代、それはぼくも生きた同じ時代だけれど、この時代は高度経済成長のバブルがはじけて日本経済が衝撃的な打撃を受けた時代だった。豊島君だって当時最も安定した業種とされていた銀行に就職したのにその銀行が潰れて、その後に外資系のファンド会社に買収されて苦労しただろう。そういうことを書けばいいんだよ。あの激動の時代を記録に遺し、君が窮地に陥ったときの苦労や困難をいかに乗り越えてきたかを語っておくことには、きっと大きな意味があるはずだ」会社の破綻、上司との軋轢、リストラや出世、転職、家族、友人、病……。親友が激動の半生を赤裸々に綴り、作家・佐藤優が生きる極意を語っていく。人生とは何か。余命を意識したとき、人は何を思うのか――。前代未聞の出版プロジェクトが始まった。
引用:Amazon.co.jp: 友情について 僕と豊島昭彦君の44年 eBook : 佐藤優: Kindleストア
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さいごに(まとめのまとめとして)
佐藤優さんの自叙作品を紹介する「まとめ記事」として記事を書いてきました。年代順に紹介していますが、どの本から読まれても楽しめる構成になっています。
自叙伝以外にも、社会情勢や政治、宗教、国家、民族といった切り口から、様々な著書が出版されています。気になる本があれば、一度は手に取って読まれることをお勧めします。

ノンフィクションとして、人に一生を本を通して読み通す機会なんて他にない読書体験だと思います。ぜひ、一度手に取ってお読みください。
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