L’Arc〜en〜Cielを聴いてみたいけれど、どのアルバム作品から聴いたら良いのか悩むあなたに向けて「初めに聴くべき1枚」を紹介します。今回は、4作目スタジオアルバム作品『True』(トゥルー) を紹介します(1996年発売)。
さらに多角的に『True』を知るために、90年代後半の音楽シーンの状勢に加えて同時代のビジュアル系バンド界隈の動きも併せて解説します。また、『True』という作品が、L’Arc〜en〜Cielにとってどのような意味を持つ作品だったのか?など様々な視点から追いかけていきます。
また、最近(2025年4月時点)のL’Arc〜en〜Cielの活動としては、『L’Arc-en-Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAY CELEBRATION -hyde誕生祭-』WOWOW独占放送&配信が、2025年4月29日(火/祝) 19:00〜 WOWOWプライムと、WOWOWオンデマンドで配信がそれぞれ決まり放映が待ち遠しいです。バンドとしての活動も落ち着き、それぞれソロの活動に戻っていきました。そんな時期だからこそ、過去の作品を通してL’Arc〜en〜Cielの魅力を解説していきたいと思います。

来年は、『True』(トゥルー)発売から、30周年のアニバーサリーを迎えます。個人的には一番好きな作品で、現メンバーで再録音されて欲しいアルバムでもあります。
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初期L’Arc〜en〜Cielの活動として
ルックスと実力を高いレベルで兼ね備えた稀代の天才ボーカリストhydeさんを擁するL’Arc〜en〜Cielが大阪で結成されたのが1991年のことでした。以降、メンバーの入れ替えを何度か経て、1993年にドラマーのsakuraの加入によって “初期L’Arc〜en〜Ciel” の布陣が固まったとされています。
同年4月にインディーズとしてリリースしたファーストアルバム『DUNE』はオリコンインディーズチャートで1位を獲得。この段階で既に1,000人規模のライブハウスを余裕で埋められるほどの人気を博しており、翌1994年には早くも渋谷公会堂でのワンマンライブ(ツアー「ノスタルジーの予感」)を実現しました。
当時、インディーズ時代のL’Arc〜en〜Cielは対バンをしないバンドとして知られていましたが、数少ないバンドの中に『黒夢』がいました。黒夢のボーカル清春さんとhydeさんやメンバーとの親交は有名な話しで、現在(2025年)も交際は続いています。
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初期L’Arc〜en〜Ciel3作品を解説
1st『DUNE』に続いて、2nd『Tierra』、3rd『heavenly』と精力的に作品を発表する、L’Arc〜en〜Cielですが、初期の音楽性について軽くふれたいと思います(機会があれば、いつか作品ごとに解説したいと思います)。
初期のL’Arc〜en〜Cielの音楽性は、幻想的で浮遊感のあるメロディと、ダークで内省的な雰囲気が特徴です。ニューウエイブやゴシックからの影響を受けつつも、独自の詩的な世界観を持ち、繊細でドラマティックな楽曲が多いです。他のビジュアル系バンドが、イメージカラーを「黒や赤」と言った、攻撃的で過激な歌詞で表現するなか、L’Arc〜en〜Cielは「白や青」と言ったイメージに加えて、内省的で文学性の高い作品の数々は、当時の界隈でも異端の存在でした。特にアルバム『DUNE』や『Tierra』では、破滅的な美しさとメロディアスな展開が融合し、リスナーを引き込む魅力を放っています。
また、初期のL’Arc〜en〜Cielの歌詞は、幻想的で詩的な表現が特徴です。生への葛藤と死へのあこがれ。愛や孤独、夢と現実の狭間を描き、切なさや儚さを感じさせる内容が多いです。例えば、「flower」では片思いの切なさを花に例えて歌い、「風に消えないで」では希望と喪失感が交錯する感情を表現しています。hydeの独特な言葉選びが、楽曲に深みを与えています。

当時、音楽性の高さから、ファンや批評家から高い評価を得ながら、実際のセールスに結びつかないというジレンマが当時のバンドに対する課題でもあったと思います。
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当時の音楽シーンについて
『True』が発売された、1996年当時の音楽シーンは、音楽セールス全盛期で発売されるCDが100万枚を超えるミリオンセラーが連発される時代でもありました。その中で、メジャーシーンを牽引していたアーティストと言えば、「Mr.Children」や「globe」、「華原朋美」や「安室奈美恵」をプロデュースする、いわゆる「小室ファミリー」が挙げられます。他にも、「スピッツ」や「サザンオールスターズ」、「B’z」と言った、今でもシーンで話題になるアーティストばかりです。
90年代後半のビジュアル系バンドの活動について
L’Arc〜en〜Cielとして、「ビジュアル系」というくくりで表現されることに対して拒否感があったことは事実ですが、あえてわかりやすさを求める上で「90年代後半のビジュアル系」として、他のバンドの活動を解説してみたいと思います。
1996年7月、X JAPAN 『Forever Love』リリース(57万枚)。当時のオリコン週間ランキングで1位を獲得しています。1997年には、LUNASEAの活動を休止した河村隆一が、『Glass』でミリオンセラーを達成しています。また、近年に活動を再開した、SOPHIA『街』も、1997年にリリースされています。インディーズ時代の名曲をリメイクした、SHAZNAは『Melty Love』で一気にメジャーシーンに駆け上がります。
他にも、アニメ『るろうに剣心』のオープニングテーマ曲、JUDY AND MARY『そばかす』や、エンディング曲、SIAM SHADE『1/3の純情な感情』がリリース。同じ、アニメ主題歌として、PENICILLIN『ロマンス』が、アニメ「すごいよマサルさん」に採用されるなど、ビジュアル系とアニメのコラボの原型を作った時代だと言えます。
メジャーシーンを牽引していたバンドとしては、X JAPANの他にも、GLAY『誘惑』が1998年に年間シングル売上1位を獲得、LUNA SEA『I for You』のリリースなど、ビジュアル系バンド出身と言われる活動が盛んな時期でしたが、X JAPAN、hide死去など悲しいニュースもありました。
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『True 』という作品を解説
『True』(トゥルー) は、インディーズ時代から数えて通算4枚目のスタジオアルバムになります。前作『heavenly』以来約1年3ヶ月ぶりとなるリリースで、今の活動ペースとは比較にならないほど、作品を世に送り出していました。
全10曲から構成されており、先行シングルシングル「風にきえないで」(21万枚)「flower」(33万枚)「Lies and Truth」(30万枚)の3曲が収録されています。
また、「The Fourth Avenue Cafe」が、アルバムからの、シングルカットとして発売が決まっていましたが、当時、在籍していたドラマーのsakuraが覚せい剤で逮捕される事件に伴い、発売中止になってしまいました。(のちに12㎝シングルとして発売)
特に、カップリング曲には、メンバー間で楽器パートを変更して編成された「裏L’Arc〜en〜Ciel」として「D’ARK〜EN〜CIEL」名義で発表。ボーカルはtetsuyaが歌い(ARK TETSU表記)、hydeは(HYDE DARK表記)ギターを担当、kenは(Kën D’Ark表記)ドラム、ベースをsakuraが(Suck・D’ark・la表記)担当しており、当時は発売を楽しみにしていましたが、sakuraの逮捕と共にシングル発表中止となり、バンドも活動停止に追い込まれてしまいました。
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収録曲について
- Fare Well (hyde作詞/ken作曲)
- Caress of Venus (hyde作詞/ken作曲)
- Round and Round (hyde作詞・作曲)
- flower (hyde作詞・作曲)
- “good-morning Hide” (sakura作詞/hyde作曲)
- the Fourth Avenue Cafe (hyde作詞/ken作曲)
- Lies and Truth-True mix (hyde作詞/ken作曲)
- 風に消えないで-True mix (hyde作詞/tetsuya作曲)
- I Wish (hyde作詞/tetsuya作曲)
- Dearest Love (hyde作詞/tetsuya作曲)
1曲目:Fare Well
1曲目にふさわしい、アルバムのオープニングを飾るインストゥルメンタル的な楽曲になっています。美しいストリングスと静かなピアノの旋律から始まるイントロが秀逸、優しいhydeさんの歌声が、少し物悲しい予感を感じさせるようなまるで映画の始まりを具現化したような楽曲で、『True 』への期待を高めます。他の作品でも「Fare Well」のような印象を持つ楽曲が存在しないことからも、この作品の思い入れが伝わります。
2曲目:Caress of Venus
ダンサブルなキーボードの導入から、エッジの効いたギターリフとキャッチーなメロディが特徴のポップロックナンバー。hydeの色気あるボーカルと、疾走感あふれるサウンドが魅力です。ライブでも、この曲のイントロが流れると盛り上がる定番の人気曲です。ken作曲のナンバーですが、初期のL’Arc〜en〜Cielの中で、ここまで突き抜けたポップ路線を強調した楽曲も珍しく(下世話な言い方だと売れ線を狙った)バンドの意気込みを感じる楽曲とも言えます。
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3曲目:Round and Round
hyde作詞・作曲で、ファンキーでグルーヴィーなナンバー。当時のラルクには珍しいタイプの曲で、ベースラインとリズムが非常に印象的で、tetsuya(当時はtetsu)のプレイが光ります。サイケな雰囲気もあり、遊び心を感じる1曲と言えます。この曲もロックとして突き抜けた感があり、初期のL’Arc〜en〜Cielとして存在しなかったと思います。後の『Driver’s High(tetsu作曲ですが)』に繋がる系譜の楽曲と言えます。
4曲目:flower
シングル曲としても人気が高い名曲。明るくポップなメロディと切ない歌詞が絶妙にマッチしており、hydeさんの歌声がより感情的に響きます。全編を通してアコースティックギターによるアルペジオが特に印象的です。また、この曲でhydeさんがハーモニカを演奏されており、楽曲としてアレンジの幅が広がった印象を受けます。PV(プロモーションビデオ)では鳥かごに閉じ込められた、L’Arc〜en〜Cielの演奏がかっこよくhydeさんのパフォーマンスも魅力的でした。歌詞の内容から「はやく 見つけて 見つけて ここにいるから 起こされるのを待ってるのに」へのメタファーを感じます。この時期にロングヘアーをバッサリ切って印象が変わったことも覚えています。
【flowerのPVを観るなら:L’Arc~en~Ciel「flower」-Music Clip-】
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5曲目:”good-morning Hide”
夢と現実の境界のような、不思議な浮遊感のあるミディアムロックナンバー。歌詞は内省的でありながらも普遍的な孤独感ややさしさがにじむ内容で、内面を覗き込むような感覚があります。
この曲は、脱退したsakuraさんが作詞を担当しましたが、L’Arc〜en〜Ciel初の全英語詞の楽曲であり、独特の雰囲気を持っています。
この曲がライブで演奏される機会はほとんどないのですが、アルバム「True」の中でも異色の存在と言えます。このアルバム全体を通して言えるのですが「アコースティック」をメインにアレンジされていると言う点が特徴だと思います。
当時のhydeさんが、sakuraさんへ詩を書くように勧め、出来上がった内容を元にhydeさんが英訳し歌詞にしたという話を聞いたことがあります。抽象的で哲学的な内容ですが英訳されたことでメロディーにあった楽曲になったと思います。
ちなみに、「”good-morning Hide”」の「Hide」は「ヒデ」と読むのか?「ハイド」と読むのか気になりますが、「ハイド」が正解のようです。「Hide」は「~から隠れる」という意味とhydeの隠語を揶揄したのでしょうね。
引用記事:【『L’Arc-en-Ciel LIVE 2025 hyde BIRTHDAY CELEBRATION -hyde誕生祭-』企画「L’Arc-en-Ciel」hyde作曲からお勧めベスト5曲】
6曲目:the Fourth Avenue Cafe
アニメ『るろうに剣心』のエンディングにも使用された楽曲です。ジャズやブルースの要素を取り入れたアレンジが印象的で、大人っぽいムード漂うナンバー。スカパラのホーンセクションも参加していて華やかです。
余談ですが、当時アニメ『るろうに剣心』のエンディングで楽曲が使用されるとブレイクするというジンクスがありました。当時、全国区ではメジャーではなかった、L’Arc〜en〜Cielも「the Fourth Avenue Cafe」で世間から見つけられちゃう!と、思ったことを覚えています。残念ながらシングル盤は発売が見送られてしまいましたが、のちのブレイクが、そのジンクスを証明したと言えるかもしれませんね。
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7曲目:Lies and Truth-True mix
先行シングルからの収録曲「Lies and Truth」複雑な感情と内面の葛藤を歌った歌詞が特徴で、hydeさんのシャウトが胸に迫ります。当時のPVを観て思うことは「hydeさんの顔面偏差値高すぎ」の一言。妖艶というか麗人と表現すれば良いのでしょうか?ハリーポッターをイメージするような衣装と相まって、古ぼけた館の中をさ迷い歩くhydeさんが「Lies and Truth」とシャウトする場面が特に魅力的です。当時、高校生だった私も30年近く聴いていますが、いまだに飽きない強い依存性と中毒性をもった楽曲です。
【Lies and TruthのPVを観るなら:L’Arc~en~Ciel「Lies and Truth」-Music Clip- – YouTube】
8曲目:風に消えないで-True mix
前曲に引き続いて、シングル曲「風に消えないで」が続きます。hyde作詞、tetsuya作曲のキャッチーなナンバーで、アコースティックギターやストリングスが印象的です。hydeさんの柔らかな歌声が心に沁みる楽曲でさわやかなミディアムナンバーです。まさに売れるために存在したと言えるような楽曲で、tetsuyaさんのメロディーセンスが光る一曲となっています。PVも感想として「hydeさんの顔面偏差値(以下同文)」アルバムでは、全体の雰囲気に合うようにアレンジされており、シングル曲と併せて聴き比べてみるのも良いと思います。
【風に消えないでのPVを観るなら:L’Arc~en~Ciel「風にきえないで」-Music Clip-】
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9曲目:I Wish
hyde作詞、tetsuya作曲でポップで軽快な楽曲。L’Arc〜en〜Cielの明るい一面が感じられる1曲で、ライブではファンと一緒に盛り上がれるタイプの楽曲となっています。当時、「ラルクがクリスマス?」と、意外性にびっくりした記憶があります。曲全体がポジティブな印象と期待感が膨らむ歌詞と相まってエネルギッシュなメロディーラインが前向きな気持ちにさせてくれます。
10曲目:Dearest Love
hyde作詞、tetsuya作曲、ラスト「Dearest Love」壮大な愛を歌うスケール感が大きなバラードナンバーです。hydeのボーカルが情感たっぷりで、ピアノやストリングスが涙腺を刺激します。真摯な愛と別れをテーマにした、物悲しく切ない楽曲です。曲の時間が「6:47」と比較的に長いほうだと言えますが、曲の構成が作り込まれていてあっという間に聴き終えてしまいます。まさに『True 』の最後を飾るにふさわしい曲だと言えます。
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さいごに
という訳で、『True 』の楽曲解説と併せて、当時の音楽シーンを追いかけてきました。L’Arc〜en〜Cielにとって、この『True 』という作品の位置づけとして、「売れるために作成された勝負作だった」ことが理解できたと思います。圧倒的なセールスをたたき出すアーティストを見上げながら、ビジュアル系バンドの界隈とは一線を画すものの、バンド自身の方向性としてセールスを伸ばすため、どうような作品作りをすれば良いのか?という葛藤と音楽性に対する自身と強い意思が伝わります。
結果として、『True 』を追い風にしながらブレイク寸前で、sakuraさんの逮捕と言うアクシデントでバンドは活動休止を余儀なくされます。ですが、新たなメンバーを迎えて活動再開後の快進撃は皆さんの知るところだと思います。
ここまで、お読みいただきありがとうございました。また、次の記事でお会いできるのを楽しみにしております。
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