
山口周さんの著書『人生の経営戦略』は、低成長・ゼロ成長社会という「かつてない難しい時代」を生き抜くための人生設計を指南する一冊です。
本書の根底にあるのは、過去の「成長前提」の認識から脱却し、人生を一つのプロジェクト、あるいはゲームとして戦略的に設計するという考え方です。
年収や出世といった外形的な評価だけでなく、「幸福(ウェルビーイング)」を最終目標に据える視点こそが重要であると説かれています。
特に40代は、人生のライフサイクルカーブにおける「大きな転換点」であり、同時にキャリアのピークでもあります。しかし、これまでの成功体験がそのまま通用するわけではなく、やり方を変える勇気と戦略が不可欠です。
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本記事では、山口周さんの著書『人生の経営戦略』を中心にYouTubeで語られた議論を踏まえ、40代からのキャリア構成の具体的行動指針を整理して解説します。

パパも同じ40代として、山口周さんの著書『人生の経営戦略』を解説することで学びが得られると良いね。

人生を「ゲーム」として捉える3つの視点

私たちが生きる現代は、かつてのように経済成長が続く時代ではなく、先が見通しにくい「低成長・ゼロ成長社会」です。
「低成長・ゼロ成長社会」という、不確実な環境を生き抜くためには、従来のように努力や根性だけに頼るのではなく、「人生を一つのゲームとして捉え、そのルールや戦略を理解する」視点が必要になると山口周さんは言います。
YouTube【PIVOTチャンネル/人生の経営戦略】では、ゲストとして山口周さんが登場し、人生をゲームとしてとらえることで、よりよく設計するために大切な視点として以下の3つをあげています。
- 勝利条件の明確化
- 使えるリソースの把握
- 時間軸の理解
どのようなゲームでも、勝つための勝利条件を学びます。人生というゲームを勝利するための条件を「幸福(ウェルビーイング)」という言葉を使って説明されています。
詳しくは【YouTubeチャンネル:PIVOTチャンネル/人生の経営戦略】

人生の長期目標を「幸福」であると設定した場合、「勝利条件を明確化」し、自分の「使えるリソースを把握」することが大事なんだ。併せて、キャリア設計を年代ごとに「時間軸」として構築していくことが重要なんだ。特に40代からのキャリア設計や人生の選択に対してどう活かせるのかを解説していこうね。

パパ、勝利条件だとか、リソースに時間軸って、漢字やカタカナが多くてなんだか難しそうだね…
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1つ目:勝利条件の明確化
人生をゲームとして戦略的に捉える上で、まず最初に必要なのは「勝利条件を明確にすること」が挙げられます。

パパ!「勝利条件」っていうくらいだから、お金持ちになって贅沢したり、出世して偉くなったり、インフルエンサーのように有名人なることが勝利条件なのかな?

そうだね。分かりやすいゴールをイメージしがちなんだけれど、「高収入」「出世」「社会的な知名度」といった目に見えるような成果は、「勝利条件」に至るまでの「パーツ」だと、山口周さんは言うんだ。
『人生の経営戦略』では、人生の最終的な目標を「幸福(ウェルビーイング)」と定義しています。「人生というプロジェクトの長期目標」を次のように設定しています。
時間資本を適切に配分することで持続的なウェルビーイングの状態を築き上げ、いつ余命宣告をされても「自分らしい、いい人生だった」と思えるような人生を送る
引用:『人生の経営戦略』50ページより
「幸福(ウェルビーイング)」とは、次の3つの要素から成り立っていると解説します。
- 自己効力感:自分の力で物事を成し遂げられるという感覚
- 社会的つながり:信頼できる人間関係やコミュニティとの結びつき
- 経済的安定性:生活基盤を支える最低限の経済的安心感
この3つがバランスよく満たされて初めて「豊かな人生」だと、解説されています。つまり、他人と比較して見栄えの良い成果を追い求めるのではなく、自分にとって本当に大切な勝利条件は何かを早めに見極めることが、人生を賢く生きる第一歩となります。
2つ目:使えるリソースの把握
人生を戦略的に進めるためには、まず「自分がどのリソース(資本)を持ち、それをどう投資するか」を正しく理解する必要があると解説します。山口周さんは、その基盤となるリソースを「時間資本」と位置づけています。
- 時間資本:誰もが平等に持つリソースであり、最も基本的な投資対象
- 人的資本:時間を投じて得られるスキル・知識・経験
- 社会資本:人的資本を土台にして生まれる信用・評判・人脈
- 金融資本:最終的に蓄積されるお金や資産

ここで重要なのは、時間資本から社会資本や金融資本に直接ジャンプすることはできないという点なんだ。時間という資本を使って、資格取得や学習、仕事経験などで人的資本を積み上げ、その結果として信頼や人脈といった社会資本が生まれるんだ。その結果として、経済的な安定という金融資本へとつながっていくんだ。

手っ取り早くラクに稼ぎたいという思いから、グレーゾーンのお仕事や闇バイトといったブラックな仕事に手を出すと、信頼を失うばかりか、捕まって刑務所に入ると大切な時間さえも無くしちゃうよね(汗)
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3つ目:時間軸の理解
人生を「ゲーム」として捉えるとき、最も見落とされがちなのが時間軸の理解です。多くの人は目の前の成果や短期的な課題にとらわれ、人生全体を俯瞰する視点を持ちにくい傾向があります。しかし、人生というゲームは有限であり、「どのタイミングで何をするか」が戦略の成否を決定づけます。
山口周さんは、人生を「春・夏・秋・冬」の四季にたとえ、各ステージに応じた戦略が必要だと説きます。
- 春(20代):試行錯誤の時期。コストが低いので、挑戦や失敗を重ねることが最大の投資になる。
- 夏(30代半ば〜40代前半):一点集中で成果を収穫する時期。試行錯誤で得た資本を活用して伸ばす。
- 秋(40代後半〜50代):ギアチェンジが必要な時期。新しい役割や知識の伝承を意識する。
- 冬(50代以降):知識や経験を社会や次世代に還元し、全体の幸福度を高める時期。
ここでの重要なポイントは、「人生は短距離走ではなくマラソン」だということです。短期的な成果に固執すると、時間軸を誤ってしまい、40代や50代で行き詰まる危険があります。
20代の頃から、長期的なゴールを見据えて行動を設計すれば、各ステージごとに自然な成長と役割転換を果たすことができます。


若いうちは、失敗しても取り戻す時間も体力もあるもんね!怖がって行動しないことや安泰な状況に身を置くことは却ってリスクになるってことなんだね!

仕事上で慣れ親しんだ組織にいることや安泰なポジションにいることを「コンフォートゾーン」と言うんだ。30代のうちにコンフォートゾーンにいると成長の機会を逸してしまい、40代になると「中年の危機」と言われるミッドライフクライシスに陥るリスクが高まるんだ。そういった意味でも40代は人生の大きな転換点とも言えるんだよ。
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40代は人生の「大きな転換点」

40代は、キャリアにおいても人生においても「大きな転換点」を迎える時期だと、山口周さんは『人生の経営戦略』やYouTubeでも特に力を入れて解説されています。
心理学者ユングは、40代を人生の生涯の「正午」という美しいメタファーで表現しました。これは太陽が最も高く昇り輝く瞬間であると同時に、登ってきた太陽が下っていく境目でもあります。
30代の後半から、40代は役職や収入の安定によって安心感を得やすい一方で、気づかないうちに「コンフォートゾーン(居心地の良い領域)」にとどまり、成長が停滞するリスクも抱えています。
つまり40代は、これまで築いた資本を守るだけではなく、自らの戦略を見直し、新しい挑戦へと踏み出すべき転換期なのです。

パパ?仕事や家庭といった人生が上手く行っているなら、考えや行動を変える必要ってあるの?今が、上手く行っているなら変える必要なんてないじゃんって思うんだけれどなぁ~

パパも、昔は徹夜や残業なんて苦じゃないと思った時もあったんだ。歳を重ねると体力も落ちるし、新しいことに慣れる負担も変わってくるんだ。でも、体力や知的な能力が落ちたとしても、それをカバーできるのが40代の強みなんだ。
「中年の危機」を認識し、ギアを変える
40代に差しかかると、多くの人はキャリアや人生の「ピーク」を迎えます。役職や収入も安定し、社会的な評価も高まる時期です。
同時に、心理学者ユングが指摘するように、「これまでの成功パターンが通用しなくなる」転換期でもあります。これがいわゆるミッドライフクライシス(中年の危機)です。

パパ?よくわからないけれど…いままでのやり方を繰り返すんじゃなくて、新しいやり方を考えれば良いの?

そうだね、40代になると、後輩も出来るんだ。自分だけが成果を出せばよいという考えから、後輩を指導するという考えかたも必要なんだ。一方で、若い人材が持っているスキルを教えてもらう「学び直し」なんかも必要になるんだ。大切なことは、上から押さえつけるだけではなくてお互いに成長しあう姿勢も必要になるんだ。
この時期に重要なのは、過去の延長線上で同じやり方を繰り返すのではなく、「ステージが変わったらギアを変える」という意識を持つことです。
たとえば、IBMの立て直しを行ったガースナーは、企業の状況に応じてリーダーシップスタイルを柔軟に切り替え、リストラからビジョンドリブン、さらには人材育成へと戦略を変化させました。
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コンフォートゾーンを抜け出す勇気
40代に入ると、多くの人が安定した役職や収入を得て、生活の基盤も固まってきます。これは一見すると理想的な状態ですが、実は「コンフォートゾーン(居心地の良い領域)」にとどまっているサインでもあると解説します。
山口周さんは、「美味しい立地の賞味期限はおよそ10年」と指摘しています。つまり、ある産業やポジションが永遠に安泰であることはなく、気づかないうちに環境の変化に取り残されるリスクが高いということです。
トヨタがエース級の人材を意図的に異動させるのも、あえて安定を崩すことで人材の成長を促すためです。
40代こそ、自らの意思で「場を変える勇気」が求められます。新しいプロジェクトに挑戦したり、異なる分野の学び直しを始めたりすることで、自分の人的資本や社会資本を更新し続けることができます。
怖さを乗り越えて一歩踏み出した経験こそが、停滞を避け、次のキャリアステージを切り拓く力になるのです。一方で、コンフォートゾーンに安住すると、新しい挑戦を避け、変化を恐れるようになり、結果的に成長が停滞してしまうのです。

パパ?カタカナでよくわからないけれど「コンフォートゾーン」ってナニ?

コンフォートゾーンは、安心できる場所のことを言うんだ。キミにとってのコンフォートゾーンは「お家」だったり、「お友達」だったりと、安心して過ごせる場所のことなんだ。コンフォートゾーンは大事なんだけれど、そこにとどまっているだけじゃダメな理由もあるんだ。
コンフォートゾーンとは?
私たちが安心して過ごせる領域、それがコンフォートゾーンです。慣れ親しんだ仕事や環境の中でストレスなく過ごせる反面、ここにとどまり続けることは成長の停滞につながります。
特に変化が激しい現代では、あえてこの「コンフォートゾーン」を抜け出すことが求められています。コンフォートゾーンを理解するためには、その外側に広がる2つのゾーンを知る必要があります。
- パニックゾーン
過去の経験が全く通用せず、思考が追いつかない領域。過度なプレッシャーでストレスが強まり、成長は見込めません。ビジネスで言えば、非現実的な目標や過酷な労働環境がこれにあたります。 - ストレッチゾーン(ラーニングゾーン)
現状から少し背伸びすれば達成可能な領域。失敗や恥ずかしさと向き合う必要がありますが、努力によって成長できるゾーンです。新しい業務や初めての取引先対応などが例で、適度な緊張感がパフォーマンスを高めます。
コンフォートゾーンにとどまることで、成長の停滞やキャリアの停滞、モチベーション低下、イノベーションの欠如が生まれると言います。
【引用記事:コンフォートゾーンとは?抜け出すメリット・方法を徹底解説 | アルー株式会社】
20代の試行錯誤を基盤に、無謀な挑戦を避ける
20代は「試行錯誤のコスト」が最も低い時期です。留学、異業種への挑戦、キャリアチェンジなど、たとえ失敗しても取り返す余地が大きく、経験そのものが人的資本として蓄積されます。
40代は家庭や住宅ローン、教育費などの「ロックイン状態」が加わり、失敗の代償が格段に大きくなります。したがって、40代では20代のような無軌道な挑戦は避けるべきです。

「ロックイン状態」なんて難しい言葉を使わなくても「責任」が伴うのが40代なんだ。けれど、責任は決して重荷や負担ではないんだ。責任があるからこそ仕事を「やり抜く力」が生まれるんだ。これは、20代の無軌道な挑戦とはまた別の力なんだよ。

私や家族が、パパの負担や重荷になっていたら悲しいな…って思っていたんだ。さすがパパ!たまには良いこと言うじゃん!
ここで大切なのは、20代で培った試行錯誤の成果を基盤として活かすことです。自分の得意分野やユニークな経験を再評価し、その延長線上で挑戦を組み立てれば、過度なリスクを避けながら新たな可能性を切り拓けます。
また、40代で「人と違う選択」をする際には、勇気や度胸ではなく、「思考の累積量」が重要です。つまり、論理的に考え抜き、なぜその選択が合理的なのかを自分の中で説明できる状態で意思決定を下す必要があります。
感情に任せた無謀な挑戦ではなく、20代で積み重ねた経験を活かし、ロジックに基づいた一歩を踏み出すことが、40代以降のキャリアにおける成功を導くのです。

パパが若い頃に店舗管理者として経営の仕事をしていたこと。今の仕事で、経験を積み重ねながら、さらに国家資格を取ったこと。昔から本を読んで勉強を続けてきたことが、積み重なって今のパパがあるんだね…
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人生の「秋」としての役割を意識する
山口周さんは、『人生の経営戦略』の中で人生を「春・夏・秋・冬」の四季にたとえて説明しています。その中で40代半ばから50代は、人生の「秋」にあたります。
この時期は、20代(春)の試行錯誤、30代(夏)の集中と成果を経て得た知識や経験をもとに、次の世代や社会に還元する役割を担うフェーズです。
40代以降は、キャリアの最前線でリーダーシップを発揮することに加え、以下のような行動が求められます。
- 若い世代の育成:自分が築いてきた知識や人的資本をシェアし、後進が活躍できる場をつくる
- 社会資本の拡張:人とのつながりを広げ、次世代が社会に出ていく橋渡し役になる
- 新しい挑戦との両立:守りに入るのではなく、知識や経験をベースに新しい領域へ挑む
人生の「秋」は「収穫」の時期であると同時に、「種まき」の時期でもあります。自分のためだけでなく、社会や後進のために動き出すことで、人生の後半をより豊かで意味のあるものにしていくのです。

パパは、社会福祉の仕事をしながら経営や運営を仕事をしているけれど、この仕事を続けていくモチベーションの一つに「後進を育てること」と併せて、少しでも「社会を良くしたい」という強い想いがあるんだ。パパの元に生まれてきたキミにとって、少しでもこの先の未来が良い社会になるように貢献したいという思いがあるんだ。
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まとめ:40代からのキャリアを再設計する

40代は、人生のライフサイクルにおける「大きな転換点」であり、これまでの延長線上の成功体験が通用しなくなる時期です。
ユングが指摘する「中年の危機」に直面しながらも、同時に人生のピークを迎えるこの年代では、過去のやり方を引きずるのではなく、新しいギアに切り替える勇気と戦略が求められます。
- 中年の危機を認識し、成功体験に固執せずピボットする
- コンフォートゾーンに安住せず、積極的に新しい挑戦を選ぶ
- 20代の試行錯誤を基盤にしつつ、無謀な挑戦を避ける
- 人的資本や社会資本を更新し続け、新しいプロジェクトを仕込む
- 人生の「秋」として、後進への知識や経験の還元も意識する
40代は、守りに入れば停滞し、変化を恐れなければ新しい可能性を切り拓ける時期です。自分の持つ資本の棚卸しを行い、ウェルビーイングという最終的なゴールを見据えながら、「再設計されたキャリア戦略」を描くことが、これからの人生をより豊かにするカギとなります。
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山口周さんの著書、『人生の経営戦略』はオーディブル版でも購入可能です。興味を持たれた方は、一度リーディングされることをお勧めします。
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