ケアマネージャーとして働くうえで、「もっと、自分の頑張りが評価されないだろうか?」と悩んだことはありませんか?実際に現場で働いているかたは解ると思いますが、ケアマネージャーという仕事は「シャドウワーク(実際に報酬にはならないが、利用者の生活を支えるためには必要とされるお仕事)」と言われる部分が圧倒的に多い割には、スポットライトが当たらないなど頑張りが認められにくい部分があります。
一方で、近年、医療・介護業界にも「成果主義」の考え方が浸透しつつあります。特にケアマネージャーは、高齢者一人ひとりに寄り添った支援計画を立てる専門職でありながら、限られた社会資源の中で効率や成果が求められる場面も増えてきました。しかし、数字で測りにくい「信頼関係」や「質の高い支援」は、成果主義の評価軸と必ずしも一致しないという課題もあります。本記事では、ケアマネージャーの働き方を軸に、成果主義の意味やその功罪、そして今後のあり方について「成果主義をケアマネージャーとしての働きかたに取り入れてみた」をテーマに記事を書いてみました。
《PR:Amazonアフィリエイト広告を利用しています》

この記事を読んでわかること
- 成果主義とはなにか?が理解できます
- 成果主義へのメリット・デメリットがわかります
- 成果主義を取り入れた、その効果についてもわかります
本記事で紹介する内容を読めば、ケアマネージャーとして働くうえで、成果主義について理解が深まります。

紹介が遅れました!やびっちょです。居宅介護支援事業所(ケアマネージャーが働く事務所)を経営しながら管理者として職員を評価する立場でもあります。そんな実体験を元に記事を書いていきたいと思います。
成果主義とは何か?
成果主義とは、個人やチームが達成した業績や成果に応じて評価・報酬を変動させる人事制度です。主な特徴は以下の通りです。
- 目標設定:業務ごとに具体的な達成基準(KPI)を明確化
- 評価の透明性:成果指標を数値化し、公平な評価を目指す
- インセンティブ:成果に応じて昇給やボーナスが増減
- モチベーションアップ:目標達成意欲を高めやすい
- 競争激化のリスク:過度な個人主義や短期的視点を招く可能性
- 評価偏りの懸念:数値化しにくい業務の正当な評価が難しい
これらを踏まえ、成果主義は効率向上や業績拡大に有効な一方、ケアマネージャーのように「質」や「信頼関係」が重要な職種では、適用方法に工夫が求められます。

弊社ではケアマネージャーとして働くうえで、利用者の「担当件数」が実績にあたります。一方で、「事例検討会や研修への参加」が貢献度にあたります。
他業種における成果主義の導入事例
製造業では、ライン作業ごとに歩留まり率や生産数をKPI化し、達成度に応じて報奨金を支給。営業職では売上目標や新規顧客獲得数を個別に設定し、コミッションやインセンティブを支給。IT企業ではプロジェクト納期・品質を評価指標とし、チーム・個人単位でボーナス配分を調整。これらは業績向上を促す一方、数値化困難な業務への配慮が課題となっています。
※POINT:KPI化とは?(組織や個人の目標達成状況を客観的に把握するために、重要業績評価指標(KPI)を設定し、数値で管理・評価できるようにするプロセスです。まず、ビジョンやミッションから具体的な達成目標(例:売上高、顧客満足度、処理件数など)を明確化し、それを達成するための主要な指標を選定。次に、その指標の計測方法や報告頻度を定め、定期的に進捗をモニタリングします。KPI化によって、組織の現状把握が容易になり、問題点の早期発見や対策立案が可能となるほか、メンバーの目標意識向上や成果連動型の評価・報酬制度の基盤づくりにも貢献します。
《PR:アフィリエイト広告を利用しています》
能力主義とは?
一方で、成果主義と勘違いされやすい評価基準に「能力主義」が挙げられます。両者は異なる概念ですが、成果と能力が密接に関連しているため、しばしば混同されることがあります。
能力主義は、従業員の持つスキルや能力に基づいて評価や報酬を決定する方法です。このアプローチでは、個々の才能や専門知識が重視されます。
能力主義のメリットは、職員の成長やキャリアアップに焦点を当てることで、長期的な組織の発展をささえる土台になることです。また、スキルの向上を奨励するため、職員の自己啓発や学習意欲が高まります。

弊社では、能力主義への取り組みとして「主任介護支援専門員」などの資格をもっていると「資格手当」がアップするなど「能力主義」も評価に取り入れています
※POINT:成果主義と能力主義はそれぞれ異なる評価アプローチを持ちます。成果主義は具体的な業績や目標達成に基づき、能力主義は従業員のスキルや能力に基づきます。両者にはそれぞれの利点と課題があり、これらを組み合わせて活用することで、より効果的な評価制度を実現していると言えます。
成果主義を導入するに至ったわけ
弊社では、「ハイブリッドワーク制」を取り入れています。「ハイブリッドワーク」とは、事務所勤務と在宅ワークを組み合わせた働き方のことです。
従来のフルタイムの事務所勤務に比べて、ハイブリッドワークは職員に柔軟性を提供し、仕事と私生活のバランスを取りやすくすることができます。 この働き方は、ICT機器を活用することで可能となり、特にコロナ禍以降のパンデミックの影響で多くの企業が採用するようになりました。ハイブリッドワークにはいくつかの利点があります。
一方で、ハイブリッドワークには課題も存在します。コミュニケーションの難しさが挙げられます。在宅ワークで働く従業員同士のコミュニケーションがうまくいかない場合、誤解や情報の共有不足することで、職員が孤独感を感じてしまうことがあります。
そのうえで、もう一つの課題が、「職員をどう評価するのか」という、人事考課の問題になります。ハイブリットワークで職員間とのコミュニケーションが不足してくると、職員の業務の進捗状況が把握しずらいなどの状況が生まれました。

職員のモチベーションアップを図る上では、目に見える頑張りを評価する「成果主義」を取り入れる必要性もありました
※POINT:ハイブリットワークを取り入れたことで職員の業務に対する進捗状況を把握することが難しくなった。そこで、目に見える成果「担当件数」を評価するという「成果主義」を取り入れることになった。
【関連記事:ハイブリッドワークを実施してわかったメリット・デメリット3つのポイント】
《PR:アフィリエイト広告を利用しています》

メリットその①:モチベーションが向上した
成果主義を導入するメリットとして、まず「目標達成意識の向上」が挙げられます。具体的なKPIや達成基準が明確になることで、個人やチームは何をいつまでに達成すべきかを把握しやすくなり、日々の業務における目的意識が高まります。
これにより、進捗管理や振り返りを定期的に実施し、達成度に応じたフィードバックを受けることで、モチベーションの維持・向上にもつながります。

弊社では、労働条件で、「30件以上から35件を担当してもらいます」と提示していますが、一定以上の件数を持つと手当が支給される仕組みになっています
具体的な「評価(インセンティブ)」を提示する事で、働くうえでの目標設定と動機付けを行っています。(※下記:POINTを参照)
メリットその②:公平な評価ができるようになった
業績や成果に基づく評価は、「担当件数」という客観的な数字で個々の努力や貢献が公正に評価されるため、働く職員間の不満や不公平感を軽減します。
一方で…

あの人は、件数ばかりに目がくらんで新規依頼ばかり受けている。利用者や家族へのフォローアップが出来ていない
など、職員からの不満もあがってくる場合もあります。
コミュニケーションツール(メールやline)などでは表に出てこない、不満や意見は対面でのミーティングなどで定期的にフォローする必要もあります。
メリットその③:生産性が向上する
成果主義により、目標を明確化しました。そのことで、職員は自らの業績を上げるために努力し、その結果が自身の報酬として還ってくることで努力に対する動機づけ(モチベーションアップ)に繋がりました。そのことで「積極的に依頼を受けていく」という流れがうまれ、組織全体の生産性が向上したと思います。
また、「業務効率化」が期待できます。優先すべきタスクが明示されることで、リソース配分やスケジュール管理が合理化され、ムダな作業や重複作業を削減しやすくなります。また、成果に直結するプロセスを洗い出すことで、ボトルネックの解消や業務フローの最適化が進み、組織全体のパフォーマンス向上にも寄与します。結果として、限られた時間や人員でより高い成果を生み出す基盤が築かれます。

特に、ハイブリットワークのところでもふれました「ICT機器を活用」することで業務の効率化と業績アップに繋げられたと思います。
【関連記事:ケアマネージャーが業務を効率化するための5つの戦略】
《PR:アフィリエイト広告を利用しています》

※POINT:弊社では、担当件数33件以上の担当件数を持つと、1件あたり¥3000円が加算される「評価(インセンティブ)手当」という、仕組みを取っています。加算された手当は夏季と冬季賞与時に支給される流れになります。
毎月、35件の担当件数を6カ月維持できれば…
「評価(インセンティブ)手当:①」(¥3.000)×「該当件数:②」(3件)×「期間:③」(6カ月)=「手当額:④」になります。
例)①:3.000 × ②:3 × ③:6 = ④:54.000円
④:が基本賞与額に加算されて支給される仕組みになっています。
一方で、「成果主義」を導入したデメリットも見ていきます。
デメリットその①:過度な競争
成果主義は職員個々の成果に重きを置くため、過度な競争や対立が生じることがあります。これにより、チームワークや協力体制が損なわれる可能性があります。
具体的に言うと、「新規依頼に対して、受けいれる職員に偏りがでる」や「困難事例と思われる依頼については効率が悪いと依頼を避ける」などの傾向が生じてしまいます。一部の職員からすると「不公平感を感じる」という温床になりかねません。
また、ノウハウや成功事例が個人に留まり、業務の属人化が進行。緊急時の対応力低下や、新人育成の遅れを招き、組織全体のパフォーマンスが低下するリスクがあります。これを防ぐには、個人評価と並行してチーム目標を設定し、協力行動を評価指標に組み込むことが有効ですが、チーム目標については「今後の課題」としています。
デメリットその②:短期的な視点
業績や成果が評価の基準となると、職員は短期的な利益や結果を追求しがちです。これにより、長期的な視野や持続可能な成長が阻害されることがあります。
具体的に言うと、件数を持つことばかりに集中して「書類作成をおざなりにする」、「担当利用者や家族のフォローアップやサービス調整を後回しにする」などが考えられます。その結果、計画的なケアプラン見直しがおろそかになり、介護サービスの持続的向上や利用者満足度の維持が困難に。中長期目標をKPIに組み込み、定期的な振り返りとフィードバックを実施することで、短期・長期の両立を図る必要があります。

実際には、上記のような課題は弊社では起こっていません。「記録を作成する」という意識を持つために、定期的に「事業所内監査」として、担当利用者のファイルをチェックしています。
デメリットその③:ストレスの増加
成果主義を実施することで、「もっと件数をもたなければ」、「今月は利用者の契約が終了して件数が下がった」など、プレッシャーやストレスを伴うことが多く、職員の健康やウェルビーイングに悪影響を及ぼすことがあります。
評価指標を数値化する過程で、定量化しにくい業務や貢献が正当に評価されにくくなる「偏り」が発生します。例えば、ケアマネージャーの「信頼関係構築」や「調整業務」は数値に落とし込みづらく、成果主義の枠組みから漏れがちです。また、評価者の主観や経験則が評価結果に影響すると、公平性が損なわれるリスクもあります。これにより、適切な支援を行っていても評価が低く抑えられ、従業員のモチベーション低下や離職率上昇を招く可能性があります。

新規依頼を職員に任せる場合には、業務の負担にならないか?など進捗状況も必ず確認するように気を付けています。
《プロモーション:本ページはアフィリエイト広告を利用しています》
成果主義を実施してわかったこと
弊社では、成果主義の一環として「評価(インセンティブ)手当」を実際に導入してみました。また、能力主義の一環としては「資格取得に対するインセンティブな評価」を実施しています。ちなみに、キャリアアップにつながる「主任介護支援専門員」や「介護支援専門員」更新などの法定内研修にかかる費用は全額法人で負担しています。現状としては、「ハイブリッドワーク」と「成果主義」を両輪に、職員の働きかたに対しては「満足」と聞き取りにて評価しています。
今後のケアマネージャーは、ICTやAIを活用した業務効率化が進む一方、対人支援の質を維持・向上させる役割がより重要になります。遠隔モニタリングやオンライン面談で多様なニーズに対応しつつ、チーム内の連携強化や多職種協働による包括的ケアを実現。さらに、ワークライフバランスを重視した働き方やキャリア形成支援が充実し、専門性を高めながら柔軟に働ける環境が整備されていくと思われます。これにより、ケアマネージャー自身の成長と利用者満足度の両立が期待されます。
成果主義の導入は働き方改革を後押ししますが、“数字だけ”で測れない価値を見失わないことが大切です。まずはご自身の業務で、定量・定性指標のバランスを見直してみましょう。チームや利用者からのフィードバックを定期的に取り入れ、360度評価の仕組みを提案してみるのも有効です。また、ICTツールや研修を活用し、質の高い支援と効率化を両立させる取り組みを始めてみてください。小さな改善の積み重ねが、ケアマネージャーとしての信頼と成果を高める第一歩になると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。今後、経営的な面からも「成果主義」への実証に対しての裏付けが出来ればと思っています。
《PR:アフィリエイト広告を利用しています》

