
近年の「働き方改革」の流れの中で、日本社会を覆っていた「終身雇用の神話」は完全に崩れ去りました。かつては一つの会社に勤め上げれば安泰と信じられていた時代。
しかし今では、転職が当たり前となり、誰もが「安定とは何か?」という根本的な問いに直面しています。この疑問は、若者だけでなく、すべての労働者に突きつけられている現実です。
そんな中で注目されているのが、「コンサルティング業界」です。特に高学歴層の間では就職先や転職先として人気が高く、その理由のひとつが「成長できるスキルが身につくから」と言われています。

パパ!「安定したいからこそ成長したい」って気持ちでコンサル業界に転職する人が多いんだって。でもね、実際には思ったほど成長のチャンスが得られないケースもあるらしいよ。
現代は「正解のない時代」と言われ、自分の頭で考える力──すなわち教養がますます求められています。
そんな中でも気になるのは、東大生という最難関を突破し、いわば「将来安泰」と思われる若者たちでさえ、なぜか**「成長」**という言葉に囚われていることです。
本記事では、『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』の著者であるレジーさんの著書をもとに、現代の若者と「成長」という価値観の関係について考察していきます。

本記事では、レジー著『東大生はなぜコンサルを目指すのか』をテキストに、現代の若者が執拗に「成長」に囚われる理由と本質について迫ります。その理由を深堀りすることで、現代社会の価値観と若者の思考の構造を考察する構成となっています
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現代の社会構造と「安定」への希求

レジー著『東大生はなぜコンサルを目指すのか』は、東大という“成功の象徴”にいる学生たちのキャリア選択を通して、現代日本の社会構造や価値観を鋭く問い直す一冊です。
かつての日本社会には「一生安泰」という言葉がありました。新卒で一度大企業に入社すれば、定年まで雇用が守られ、年功序列で昇進し、退職後も十分な年金が保証される──そんな終身雇用の神話が信じられていたのです。
近年、その仕組みは完全に崩れ去りました。企業はリストラや早期退職を進め、転職は当たり前の選択肢となり、「会社に人生を委ねれば安心」という時代は過去のものとなりました。

でもさ、人が「安定」を求める気持ちってやっぱり変わらないんだよね。家族を養ったり、生活を守ったり、将来に備えたり…やっぱり誰だって安定は欲しいと思うんだ。だけど、その保証がどこにもないからこそ、みんな不安を抱えちゃうんだよ。

そこで出てくるのが「成長」っていう言葉なんだね。安定が手に入らないなら、自分をもっと磨いてスキルを高めて、未来を切り開こうとするんだね。つまり…安定したいからこそ、成長しなきゃいけないんだよね。
この逆説的な構造こそが、現代社会を理解する上での大きな鍵となっています。かつての「安定=組織に依存」から、「安定=個人の成長とスキル獲得」へと価値観はシフトしました。今を生きる私たちは、この変化にどう向き合うのかを常に問われているのです。
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なぜ東大生はコンサルを目指すのか
著書『東大生はなぜコンサルを目指すのか』の前半では、現代の「コンサルティング業界」をめぐる状況が取り上げられています。
そこで描かれるのは、レジーさんならではの視点から分析された、「成長神話」に囚われるビジネスパーソンの心理です。
レジーさんは、この「成長」という言葉が、いまや絶対的な正義のように扱われている現状に強い違和感を覚えるようになったと語ります。
成長は本当に無条件で正しいものなのか? この問いこそが、彼の問題提起の出発点になっています。

「コンサルに就職して○○をしたい」など、目標うんぬんの話しではなく、「コンサルファームに行けば成長できる」と、「成長」することが目的であり目標になっていることに対して疑問を上げているのね!
コンサルで働く意義としてよく語られるのが、「ポータブルスキル(どこでも通用する持ち運べるスキル)」を身につけられることです。
業界や職種が変わっても役立つスキルは魅力的であり、多くのビジネスパーソンがそこに価値を感じています。
レジーさんは、この「ポータブルスキル」だけに過剰な価値が置かれてしまっている現状に疑問を投げかけます。
その背景には、働き方改革を経て大きく変化してきた日本の社会構造の変遷があります。終身雇用が崩れ、「安定」が保証されない時代になったからこそ、スキルを携えて転職市場を渡り歩くことが「生き抜く戦略」として選ばれるようになったのです。
『東大生はなぜコンサルを目指すのか』では、この流れをただ肯定するのではなく、「本当にそれだけでいいのか?」という視点から現代の働き方を解説しています。
ポータブルスキルとリスキリングの重要性
コンサルファームで働く魅力としてよく語られるのが、**「ポータブルスキル」**です。求人情報やキャリア本でも頻繁に登場する言葉ですが、実際にはどんな意味なのでしょうか。
著者のレジーさんは、これをシンプルに「持ち運べる技能」と表現します。つまり、特定の業界や会社に縛られるのではなく、職場が変わっても活かせる普遍的なスキルのことを指しているのです。

厚生労働省は「職種の専門性以外にも、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル」と定義していて、一言でいえば「つぶしが効く」とでも言えばいいのかな?どこに行っても使える能力のことだよ。
本書の第1章では、厚生労働省では9つの要素が紹介されています。コンサルで身につくスキルとして、次の5つが「ポータブルスキル」として重なる要素だと言います。
- 現状の把握:取り組む課題とテーマ設定の情報収集と分析力
- 課題の設定:事業、商品、組織、仕事の進め方など課題の設定方法
- 計画の立案:担当する業務と課題遂行のための具体的な計画立案
- 課題の遂行:スケジュール管理や各種調整、業務遂行の上での障害と重圧の排除
- 状況の対応:予期背に状況への対応や責任の取り方
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国を挙げて進められる「リスキリング」の波
「国を挙げて」と言っても大げさではないほど、いま日本社会ではスキルの習得が重要視されています。その代表例が「ポータブルスキル」と並んで注目される、**「リスキリング」**です。
リスキリングとは直訳すると「学び直し」のこと。背景には、コロナ禍で一気に加速したデジタル機器の活用や、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進、さらにAIの本格的な導入があります。
企業にとっても、従業員が新しいテクノロジーを使いこなすことは生き残りに直結する課題となっています。
こうした流れは若年層だけでなく、すでにキャリアの後半に差し掛かる50代の社員層にまで広がっています。実際に、大手企業が社内でリスキリング研修を行ったり、国が補助金を出して支援したりと、まさに「ブーム」と言える状況です。

リスキリングって難しく聞こえるけど、要はExcelとかのデジタルスキルに始まってAIの活用力、オンラインでのコミュニケーション力、それに自分で課題を見つけて解決する力、この4つを押さえることが重要なんだ。

結局リスキリングって、「新しい道具を使いこなしながら、人としての強みもアップデートする」ってことなんだよね。
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成長神話と「成長教」のドグマ

いまの社会では、「成長」とお金──つまり年収は、切っても切れないほど密接に結びついています。キャリアの選択や転職の動機を考えるとき、多くの人が「どれだけ成長できるか」と「どれだけ稼げるか」をセットで意識しているのが現実です。
著書『東大生はなぜコンサルを目指すのか』の後半では、そんな「成長」を追い求めて転職を決意するなかで生じる、いわば不都合な真実についても冷静に描かれています。
理想と現実のギャップ、成長のスピード感に振り回される心理、そして転職したからこそ見えてくる厳しい現実──。それらを一歩引いた視点から分析しているのが特徴です。

誰もがうらやむような大企業に入った「商社マン」って、本来なら将来安泰のはずだよね。だけど実際は、「成長」にとらわれちゃって、その裏で思わぬ不都合な現実がじわじわ近づいてくるんだ。
「商社マン」の華やかなイメージと現実のギャップ
厳しい競争を勝ち抜き、念願の大企業に入社した「商社マン」。まさに将来安泰のキャリアを手に入れたかのように見えます。
ところが、入社してしばらくの間に待ち受けているのは、華やかなイメージとはかけ離れた大組織の中での下働きです。
そこで彼らを待ち受けるのは、一人の若者が単独で乗り越えるにはあまりにも高い「企業の倫理」という壁。その現実に直面したとき、心の中にはある感情が静かに芽生え始めます。

「自分、この会社に入って本当に正解だったのかな…?」最初は誇らしかったはずなのに、いざ働き始めると下働きばかりで成果も見えないんだ。「このままでいいのかな…?」っていう焦りとか、「え、思ってた仕事と違うじゃん!」っていう不満なんだよね。しかもね、同時に「もっと成長したい!」「早く力をつけたい!」っていう気持ちもどんどん強くなっていくの。
ベンチャー企業という新しい選択肢
そんな時に目に入ってくるのが、ユニークなテクノロジーを武器に社会課題の解決に挑むベンチャー企業の存在です。
大企業での下積みや限られた裁量にモヤモヤしていた若手にとって、そこから聞こえてくるのは「成長スピード」や「裁量権」といったキラーワード。
これらとセットで語られる**「ベンチャー企業」という言葉そのものが、次のキャリアを選ぶうえで強烈に魅力的に映る**のです。

うちの会社に来れば、若いうちから経営に関わることが出来るよ。「自分が会社を動かしている」という実感が圧倒的な成長につながるんだ。最新テクノロジーを活用し、社会の大きな問題に挑む姿勢もベンチャーならではの魅力だよ。
こうして、誰もが羨むはずの大企業で働く「商社マン」ですら、安泰だと思われていたレールから自ら降り、ベンチャー企業へ転職していく現実が描かれています。
大組織で守られた環境にいながらも、「もっと成長したい」「裁量を持ちたい」という欲求が彼らを動かすのです。
結果、世間からは順風満帆に見えるキャリアをあえて手放し、不確実性の高いベンチャーという選択肢に踏み出していく姿が紹介されています。

大企業からベンチャーに転職するときって、すごい高揚感があるんだよね。その勢いで、実は「給料が下がる」っていう大事な事実さえも気にならなくなっちゃうんだ。
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成長の裏側に潜む「承認欲求」

本記事では、レジーさんの著書『東大生はなぜコンサルを目指すのか』を通して、今の高学歴層がなぜ「成長」を求め、転職という手段でキャリアを選び取っていくのかを紹介してきました。
この本に描かれているのは、まさに**「成長」というドグマと日々向き合いながら、生き残りをかけてキャリアを築いていくビジネスパーソンの姿**です。
安定が保証されない時代において、成長への欲求は避けて通れない現実。しかし同時に、その成長が本当に自分にとって必要なのかを問い直すことこそが、これからのキャリア形成において重要だと示唆されています。

パパ?そもそもさ、なんで成長しなきゃいけないの?のんびり安泰に暮らしちゃダメなのかな?

この本ではちょっと触れられてるくらいなんだけど、実はSNSの存在ってすごく大きなポイントだと思うんだよね。
SNSと成長欲求の裏にある「承認欲求」
ポータブルスキルを磨き、十分な収入を得て、充実したビジネスライフを送る──。これらを追い求める「成長」の根底には、やはり**「安定したい」という欲求**があります。
さらに深掘りすると、そこにはもう一つの大きな動機が見えてきます。それは、**「他人に発信しても恥ずかしくない“看板”が欲しい」**という想いです。
いわば「マウントが取れる肩書きやスキル」を求める気持ちです。
現代は、誰もがSNSを通じて情報を発信できる時代です。その中で、**「スキルと収入とビジネスライフを手に入れた自分」**をアピールすることは、大きな承認欲求を満たす手段になっています。
成長を求める動機の背景には、社会的な安定への希求だけでなく、他者から認められたいという強い願望が存在しているのです。

だからこそ、成長に囚われスキルアップを目指すという「新たな成長神話」に囚われていくんだね…SNSって怖い。
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「成長しない」という選択が許されない空気
レジーさんの著書『東大生はなぜコンサルを目指すのか』では、「成長教」によって人生のバランスが崩れてしまう危険性が指摘されています。
一例として紹介されているのが、マンガ『夫は成長教に入信している』です。物語の中では、主人公が「もっと成長しなきゃ」という強迫観念にとらわれ、やがて心身のバランスを崩していく姿が描かれています。
「成長」を絶対的な正義と信じ込みすぎることが、人生そのものを不安定にしてしまう可能性を示す象徴的な例と言えるでしょう。
もっと成長して俺が生きた証を…この世界に爪痕を残したい
自分の生きている世界と生きていない世界がまったく同じだったら
自分の生きている意味ってなんだろうって思っちゃうんだよ!2021年に『コミックDAYS』で連載が開始され、ビジネスパーソンの「あるある」を描いているとSNSなどで話題を呼んだマンガ『夫は成長教に入信している』。昨今のビジネスパーソンがキャリアを語るうえでの決まり文句となりつつある「成長」をテーマに、会社での出世やスキルアップを目指す人生の主人公のコウキが、頑張りすぎるあまり徐々にバランスを崩していく様を描いた作品である。冒頭に引用したのはコウキが心身ともに追いつめられていく中で切迫感と共に発するセリフだが、この作品の原作者の紀野しずくによると、このセリフは「いわゆるハードワーカーと呼べるような働き方をしている人たち」への取材の中で感じ取れた仕事へのスタンスを言語化したものだという(「『仕事で成長しなきゃ』は危険サイン?ビジネスパーソンが陥りがちな『成長』のワナ」ミーツキャリア、2024年7月8日)。
引用:レジー著『東大生はなぜコンサルを目指すのか』~20ページより~
本書では、現代社会における「成長」の位置づけが描かれています。そこでは、「成長すること」が疑いようのない善と定義され、逆に「成長しない」という選択をした人々は異端視される。その結果、どこか排他的な空気さえ漂っていると指摘されています。
その姿を象徴的に描く存在が、マンガ『夫は成長教に入信している』に登場する主人公・コウキです。
彼は、自分の目標を鏡の前で声に出して自己暗示をかける「引き寄せの法則」に熱中し、週末には仲間と横文字だらけの自宅会議を開きます。さらには旅行の最中でさえも、休むことなくマインドフルネスの実践に励むのです。
こうした描写は、「成長」という言葉が生活のあらゆる場面を侵食し、人間らしいバランスを奪っていく危うさを端的に物語っています。

その姿から見えてくるのはさ、「時間を資源として考えて、全部を成長のために使っちゃう」っていう姿勢なんだよね。つまり、成長とか成功にまっすぐ突っ走る目的志向ってこと。言い換えれば、「コスパ」とか「タイパ」にめちゃくちゃ優れてるってことなんだよ。

頑張りすぎた結果、コウキさんは体調を崩してしまうのね…
マンガ『夫は成長教に入信している』の終盤では、主人公のコウキがふと立ち止まります。
「自分も今まで頑張ってきたけど、それって何のためだったんだろう」
「いつの間にか、成長すること自体がゴールになってしまっていたのかもしれない」
こうした自省の言葉は、成長を追い求め続けた結果、本来の目的や人生の意味を見失ってしまう危うさを象徴しています。
努力すること自体は悪いことではありません。しかし、その努力が「なぜ必要なのか」という問いを欠いたまま積み重ねられると、気がつけば「成長のための成長」に陥ってしまうのです。
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結論と提言──「なぜ成長するのか?」を問い直す

本記事では、レジーさんの著書『東大生はなぜコンサルを目指すのか』を通して、現代における「成長」というテーマを深掘りしてきました。
結論として見えてきたのは、現代のビジネスパーソンが「安定したいからこそ、成長を求める」という逆説的な状況です。
スキルを獲得し、転職を通じてキャリアアップを目指す──その背景には、すでに崩壊した「終身雇用」という安泰の仕組みがあります。いわば、かつてのエデンの園から追放された私たちは、安定を求めて成長に駆り立てられているのです。
しかしそこには、「なぜ成長しなければならないのか?」という根本的な問いが抜け落ちています。その空白を埋めるかのように広がっているのが、成長を絶対的な善とみなす**「成長教」**のドグマです。
本書は、そんな現代人の姿を映し出しながら、私たち一人ひとりに「本当に必要な成長とは何か?」を問いかけています。

今の時代って「正解がない時代」ってよく言われるよね。だからこそ、自分の頭で考える力、つまり教養がどんどん大事になってるんだと思うんだ。で、「それって当たり前でしょ」って言われてることに対しても、「なんで?」ってちゃんと問い直す姿勢こそが、教養の本質なんじゃないかなって思うんだ。

hontoの電子書籍ストアでね、『東大生はなぜコンサルを目指すのか』って本、EPUB形式でちゃんと買えるよ。気になった方は一度、チェックしてみてね。
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